- 2015.11.13
- 書評
睡眠不足は事故、肥満、容姿衰えのもと
文:木村 博江
『よく眠るための科学が教える10の秘密』 (リチャード・ワイズマン 著/木村博江 訳)
ジャンル :
#ノンフィクション
人は人生のおよそ三分の一くらいを眠ってすごす。日本人の一日の平均睡眠時間は、以前は八時間と言われていたが、現在は多少減って七時間五〇分ほど、世界の中で最長はフランスで八時間五〇分くらいのようだ(二〇一一年八月、朝日新聞)。眠ることは、一日の三分の一が費やされるほど大切なものなのに、日常の中では「あって当たり前」と受け取られ、あまり大切にされていないのではなかろうか。この本の著者、リチャード・ワイズマン博士は、そんな疑問をもった。睡眠が不足すると、人はどうなってしまうのか、どうすれば質の高い眠りを自分のものにできるか。それを改めて考えてみようと、書かれたのがこの本である。
「眠り」をテーマにした本書で取り上げられているのは、熟睡のための具体的な方法、いびきや寝言、夢遊病、金縛りなど、睡眠にまつわる現象の原因とその解決法など、身近なものばかりだ。眠っているあいだに語学力がアップするという「睡眠学習」の効果、質の良い眠りを自分のものにする方法、夢占いやフロイトの夢解釈、夢のセラピー効果なども具体的に紹介されている。
また、眠りの大切さを説くために、充分な睡眠が取れないと、人はどうなるかというマイナス面も、実際の例とともに記されている。アメリカで最長不眠記録に挑戦したDJの例などは、不眠状態の恐ろしさをまざまざと実感させてくれる。寝不足は事故のもとでもあり、肥満を招き、容姿にも影響がでる。まさに眠りに関するすべてが網羅されている、「睡眠百科」のような本と言えるだろう。
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