2011.08.20 書評

自分自身との対話が閉塞感を打ち破る

文: 松岡 修造 (スポーツキャスター)

『本気になればすべてが変わる――生きる技術をみがく70のヒント』 (松岡修造 著)

 誰でも、スランプに陥って自分らしい仕事ができなくなってしまうことがあります。

 ゴルフの石川遼選手も、一時期、パットの不調に苦しんだことがありました。

 はじめのうちは、「絶対に打ち方が悪いからだ」という考えにとらわれ、左手一本で打ったり、右手一本で打ったり、スタンスを変えたり、いろいろな練習方法を試してみたそうです。

 けれど結局、大切なのはそういうことではなく、「今から自分がどこに打とうとするのか」なのだと気付きました。

 そこにほとんどの集中力を注ぐようにしたことで不振脱出のきっかけをつかみ、二〇一一年全米オープンではパットを次々と決め、最終的に自己ベストの3アンダーで試合を終えたのです。

 その後、遼さんはこう言っていました。

 「これから打つパットが三打目であろうと七打目であろうと、同じ集中力を注いで打つ。一打も気を抜かないことが大事です」

 気持ちの強さが伝わってくる言葉です。「遼さんは、自分自身としっかり対話できているんだな」と感じました。

 自分をしっかりと見つめ、自分の心の声を聞いているからこそ、弱点を克服できるようになるし、より高い集中力を持てるようにもなるのです。

 高い集中力はトップアスリートに共通するものですが、いつも集中ばかりしていては精神的にもたないので、意識的に自分をリラックスさせてやることも重要です。

 たとえば僕は、現役のとき、ウィンブルドンの試合前にゴルフをしていました。

 普通は、現地入りしたらテニスだけに集中し、「もっと練習しよう、もっと練習しよう」と思うのですが、それが焦りにつながり、自分を追い詰めることになってしまうことも多いのです。

 僕にとってゴルフは、ボールも止まっているし、相手もいないし、テニスとまったく違った視野で見られるスポーツです。そのためテニスを新鮮に感じられ、理想的な心理状態で本番に臨むことができました。

 このような〈集中とリラックス〉の使い分けは、テクニックさえ身につければ、仕事や勉強にも応用できます。ただ、〈やらされている感〉があると本気になれないので、集中することが難しくなります。

本気になればすべてが変わる
松岡 修造・著

定価:550円(税込) 発売日:2011年08月04日

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