2014.04.04 書評

『ビーンボール』解説

文: 鷲田 康 (スポーツジャーナリスト)

『ビーンボール』 (本城雅人 著)

「アメリカでも代理人の方は結構酷い呼ばれ方をしているそうですね」

「ドラキュラとか、シャークとかスネークとか、CCと呼ばれた代理人もいます」

「CC?」

「キャッシュ&キャリー、バッタ屋と呼ぶのと似たようなもんです」

「現金にしか興味がないってことですか?」

「そういうことです。そもそも弁護士じたいがレインメーカーって呼ばれていますからね」

 本書に出てくるマネージメント会社の女性社長、羽田貴子と主人公の代理人、善場圭一との会話である。

 この会話のようにもちろんアメリカでも代理人は決して正義の味方とは見られていない。むしろ野球を含めたスポーツファンからは、ほとんど歓迎されない存在なのが実情である。

 その大きな理由は選手の年俸の高騰にある。

 先頃、禁止薬物問題で出場停止処分を受けたニューヨーク・ヤンキースのAロッドことアレックス・ロドリゲス内野手は、テキサス・レンジャーズ時代に10年総額2億5200万ドル(当時の換算レートで約280億円)という空前絶後の契約を結んだ。

 その陰には敏腕で鳴る代理人のスコット・ボラス氏の存在があったわけだが、あまりに高額な年俸(さらにその後の薬物問題を含めたAロッドの凋落ぶりも加わったが)には、ファンの方が逆に嫌悪感を持ち、その大型契約で暗躍した代理人にも非難の視線が集中した。そうして結局は、大事な試合で凡打を繰り返すAロッドに、味方ファンからも容赦ないブーイングが浴びせられるようになってしまったわけである。

 ただ、アメリカ現地で取材をしていると、華々しいスポーツマネージメントの世界の裏の実態に接する機会を得ることもある。

 日本ハムファイターズからメジャーリーグのテキサス・レンジャーズに移籍したダルビッシュ有投手の移籍取材で、米国の辣腕代理人の一人と言われるアーン・テレム氏と会ったのは2011年の夏のことだった。

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ビーンボール
本城雅人・著

定価:700円+税 発売日:2014年03月07日

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