──文春文庫「丸かじり」シリーズ二百万部突破記念ということで、十月の『パイナップルの丸かじり』を皮切りに、『コロッケの丸かじり』『おにぎりの丸かじり』と、三ヶ月連続刊行中です。これは『週刊朝日』の「あれも食いたいこれも食いたい」をまとめたものですが、そもそもこの連載を始められたきっかけを教えてください。
東海林 一九八七年の一月から始めたんだけれども、最初にテーマを決めたほうが書きやすいと思ったのね。で、「食」だったらどうにかなるだろう、と。最初の二、三年は楽だったんだけど、だんだん書くことがなくなってきてね(笑)。
──とおっしゃりつつ、最新号(十月二十二日号)で連載千百四十二回。二十四年間も続いているのはすごいことです。
東海林 たとえば「天丼」について書くとするでしょう。天丼そのものの魅力、ネタの種類、正しい食べ方、海老天の大きさ、と角度をいろいろ変えるのね。これで五パターンはいける。うなぎやトンカツ、ラーメンもそうやって、何度か書きました。
ラーメンの世界って、この二十年ですごく変わってきているから、書くことはあるんです。でもラーメンは読者を引き付ける力が圧倒的に強い。だから書くときは、よっぽど面白くしないと、と肝に銘じてる。
あと、エピソードが重ならないようには、すごく気をつけてます。これはどの文章家も同じだと思うけれど。
──西瓜を育てたり、自ら台所に立って作ってみたりもする。
東海林 レポートものね。切干大根やら里芋の煮物やら、いろいろ作った。材料はたいてい西荻窪の西友で買ってきてます。
寿司は独学で勉強して、三十年以上自分で握っているんで、割と手馴れています。しめ鯖を作ったこともあったな。
──「冬ソナ弁当」を買ったり、酢バーやもつ鍋、ジンギスカン……と流行(はや)りものにも敏感ですね。
東海林 新聞や雑誌、テレビを細かくチェックして、メモをとるようにしています。
店に行くときはいつも覆面だけど、バレたことは一回もない。あとね、ほとんど自腹。いままでで『週刊朝日』に払ってもらったのは、二十年間で十回くらいかな(笑)。
──連載を続けていくうえでのモットーはありますか。
東海林 悪口は書かない。店に食べにいって、美味しくなかったときは、書くのをきっぱりやめる。
あと、自分が疑問や不満に思っていることに、どのくらい賛同者がいるか。これが商売の基準で、とっても大事なんですよ。
たとえば「コンビニのおにぎりの具が、ご飯の量に較べて少なすぎるっ」て、思ったことない? 僕は一口目からもう具が出てきてほしいの。でも周りに聞くと、そう思っている人はあんまりいなかった。
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