インタビュー・対談

アジアを意識した時代ファンタジー

『烏(からす)に単(ひとえ)は似合わない』 (阿部智里 著)

聞き手: 「本の話」編集部
アジアを意識した時代ファンタジー

――松本清張賞受賞おめでとうございます。ただ、受賞そのものより、最終候補に残ったことの方が嬉しかったとお聞きしていますが。

阿部 3年前、高校2年の時に松本清張賞に応募した「玉依姫(たまよりひめ)」が最終選考に残れなかったこともありますが、最終選考候補作に残るのは実力、受賞は運と思っていました。受賞はもちろん嬉しいです。そのことによって、これから周りに気兼ねすることなく小説をどんどん書いていくことができるのが嬉しいです。

――今回20歳で松本清張賞、最年少での受賞です。受賞作『烏(からす)に単(ひとえ)は似合わない』は八咫烏(やたがらす)が支配する地域「山内」を舞台に「妃選び」の物語が展開される、ファンタジーです。

阿部 自分が読んでみたいものを書いたのですが、小さい頃からファンタジー的なものを許してくれる環境が周りにあったみたいです。幼稚園の時、私が虹を食べたとか、キノコの傘をさしたとか言っても、周りの大人たちは否定することもなく受け入れてくれました。小学2年の時には「ハリポタ」に熱中しました。読みたくて学校から全速力で帰ったくらいです。そういう様子を見ていて母が私に「小説家が向いているかもしれない」といってくれました。それから物語を書くという方法があるんだと知って、作文帳数冊にひとつの話を書いたりしていました。

――高校時代は創芸部、いわゆる文芸部に入っていたそうですね。中学で詩、高校で小説が関東で最優秀賞になったとか。

阿部 それらは授業の一環で書いたものです。高校3年のときは流石に受験勉強があるので小説を書くことができなかったので母に「小説が書きたい、書きたい」とこぼしていました。大学入学が決まって、その春から約2年間かけて書いたのが受賞作です。

――『烏に単は似合わない』は舞台や設定が架空のものなのに、その世界観というべきものが実にリアルに迫ってきます。

阿部 ある本のあとがきに「『ハリポタ』の物語の背景には英国の文化と伝統がある」と書いてありました。もともと和ものが好きですが、日本という国に生まれた私が書いていくとしたら日本や、それを取り巻くアジアしかないと。大学の学部も小説を書くために選んでいます。例えば、授業では実際に十二単を着るような講座もありますし、中国やアジアの国々を深く知るための勉強もしています。

――人物、衣装の記述などが絵を見るように詳細ですね。

阿部 自分の頭の中に1つの歴史の流れのようなものが確立していて、面白いと思うものを抽出していくような感じです。「山内」で使っている言葉も自分では「御内詞(みうちことば)」といっていますが、日本語でない言語を設定しています。話し言葉は階層によっても違いますし、服装なども上流は平安貴族の服、庶民は江戸時代のような着物を着ていますね。服装などの風俗、登場人物の家系図や、例えば鬼火灯籠の明りがどうやって灯るかまで考えて書いています。登場人物は1人1人が主人公になるくらいの思い入れで書いています。ディテールがあやふやだと読者が小説の世界に入っていけないと思います。この世界の事でしたら、何か質問されても、きちんと回答できますよ。

――最年少受賞ということで注目される面もあると思いますが、これからどのような作品を書いていきたいですか。

阿部 賞は取った後の方が大変だと思っています。最年少ということに甘えず、気を引き締めていきます。作品としては日本を意識して書いていますので、読者のみなさん、編集者の方に許されるものなら日本の時代ファンタジーを書き続けていきたいと思っています。

烏に単は似合わない
阿部智里・著

定価:1418円(税込) 発売日:2012年06月23日

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