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硬骨漢・大岡昇平の、音楽と妻と共にある一日

硬骨漢・大岡昇平の、音楽と妻と共にある一日

文・写真:「文藝春秋」写真資料部

 明治四十二年(一九〇九年)、東京・牛込に生まれる。高校時代小林秀雄に出会いフランス語を学び、中原中也とも親交する。京都帝国大学文学部を卒業後は、新聞社や大企業に翻訳者として勤めつつ、スタンダールに傾倒する。そんな大岡昇平が、昭和十九年(一九四四年)、三十五歳にして召集される。フィリピン戦線に送られ、米軍の捕虜となった。

 帰国後の昭和二十四年、捕虜の体験を綴った「俘虜記」が高く評価され、以来「野火」「レイテ戦記」といった、強烈な体験に裏打ちされた戦争物が広く読まれた。

 同時に、推理小説、大人の恋愛小説、歴史小説も手がけた。史実の脚色や史観の偏りを嫌い、井上靖、海音寺潮五郎、松本清張、江藤淳、ついには森鴎外といった面々を遠慮なく批判。激しい論争を巻き起こすことも度々で、「ケンカ大岡」と呼ばれた。

 そんな旺盛な好奇心のバックボーンは、フランス文学者としての、芸術への深い造詣にあった。音楽を好み、自身でピアノも弾いた。写真は昭和三十七年六月号「オール讀物」のグラビア。出征中には二人の子供を抱えた妻には苦労をかけた、と語る、その春枝夫人の手にしているのはモーツァルトのレコードである。

 晩年は「文學界」に「成城だより」を連載、映画、ポップス、ロック、漫画までを語っていた。昭和六十三年(一九八八年)、七十九歳で死去。

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