1998年の、まだ寒い早春の日のことでした。「インターネットを始めよう」と思い立ち、パソコンをネットに接続したのです。
苦労して、やっと.がり、最初に検索した文字は、「島田荘司」です。そうしたら、島田荘司先生に関連する、実に色々なサイトがありました。
ひとつひとつ、サイトを見ていくうちに、思わず私「おおっ!」と、叫んでしまったのです。
〈島田荘司先生の作品に登場する名探偵・御手洗潔。彼を主役にした短編小説を募集します〉
とあるサイトに、そんな記事があったのですね。
「僕にも書けるのではないか」
今でも不思議なのですが、その記事を見て、瞬間的に思いました。
小説を書いたことなど、ただの1度もありません。でも大好きな御手洗潔さんのお話であれば書ける!
そう決めて、夢中でトリックや物語を考えました。書棚の本を参考に、改行時の文字下げの方法や、……と――の使い分けなどを勉強し、一気にどどーんと書いたのです。
すぐに印字して出版社さんに送り、やがて返信がきました。封筒を開けて便箋を取り出し、文字を目で追い、私はその場にすわり込みました。
信じられないことに、島田荘司先生からのお手紙が入っていたのです。そして「収録決定」の文字。嬉しさのあまり、全身の力が抜けたのですね。
やがて本が、発売されました。
自分の書いた小説が、活字になって書店さんに並ぶ。
そのことに私は高揚し、なんとですね、そのままの勢いで、長編を書いてしまったのです。
今にして思えば、トリックを並べただけの、習作とさえ呼べないものでした。けれど島田荘司先生が拙稿を拾ってくださり、一緒に直して、出版レベルまで高めましょうと、言ってくださったのです。
それから島田先生のご教示により、修正作業が始まりました。
島田先生はとてもお優しく、私の意見を決して否定なさらず、丁寧に指導してくださいました。1日に3通、メールを頂いたこともあります。
やがて拙稿は『天に還る舟』という名の小説に生まれ変わり、出版されました。2005年の夏のことです。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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