二十二歳だったろうか。新宿歌舞伎町の新宿ミラノ座で、スター・ウォーズ第一作を見た。かれこれ四十年ほど昔だ。高校生のころ、映画雑誌の片隅にハリウッドで大がかりな宇宙SF映画を作りかけている、という記事を見つけて以来、わくわくしながらその日を待ち望んだのだ。ところが、あろうことかその前日、徹夜でアルバイトをしていたので、迂闊にも途中で眠り込んでしまったという塩っぱい経験がある。
そのころ、歌舞伎町はディスコの全盛期で、夜っぴて仲間とともに踊り狂い、夜明けの一番電車でとぼとぼとアパートに帰るという日を送っていた。歌舞伎町で怖い目に遭ったことは一度もなかった。いつも油断しきって、その懐にどっぷりとはまり込んでいたのだ。基本的にいまの新宿も歌舞伎町も、そのころと変わりはないのではないか。遊びに出かける人々は、たぶん皆そう思っている。暴力沙汰やぼったくりバーがあるのは知っているが、それはスリリングな遊びのちょっとしたスパイスと割り切って。
そんな街を舞台にした警察小説を書いてゆこうと思う。新宿警察署は、高層ホテル街の中にあるので目立たないけれど、実は日本で最多の警官が配備されているマンモス警察署でもある。そこで目を光らせている刑事たちは、きっと一般人とは異なる目で新宿という街を見ているのかもしれない。それを表に出していければ、何とか小説として成り立つのではないかなと思っている。よろしくお願いします。
「別冊文藝春秋 電子版6号」より連載開始
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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