2016.12.20 別冊文藝春秋

片腕を“乗っ取られた”少年のせつなき逃亡劇

文: 知念 実希人

知念実希人「レフトハンド・ブラザーフッド」

 片手が『何か』に乗っ取られたかのように勝手に動き、物を盗んだり、ひどいときには自分の顔を殴ったりする。そんな話を聞いたら、SFやホラーなど、フィクションの中の話だと思う方が多いのではないだろうか? しかし、そんな症状が生じる疾患が現実に存在している。

『エイリアンハンドシンドローム』や『他人の手症候群』と呼ばれるその疾患、それにかかったら、日々の生活がかなり不便になることは想像に難くない。しかし、もし片手に宿った『何か』、それが親しい人の魂だったとしたらどうだろうか?

 今回より連載させていただく『レフトハンド・ブラザーフッド』は、左手に兄弟の魂が宿った高校生の少年の物語である。

 いま思えば、十代の後半という時期は色々と馬鹿なことをやったものだ(べつに法に触れるようなことはしていないけれど)。子供から大人になる不安定な過渡期。社会に出て、様々な経験を積み、分別がつくことで失った何かを、その時期は胸に秘めていた気がする。

 すでに三十代の後半になってしまった身だが、記憶をさらってあの時期の気持ちを思い出しつつ、主人公の少年が体験する奇妙で、恐ろしく、それでいて感動的なひと夏の、物語を描いていければと思っている。

「別冊文藝春秋 電子版11号」より連載開始

別冊文藝春秋 電子版11号(通巻327号/2017年1月号)

定価:※各書店サイトで確認してください
発売日:2016年12月20日

詳しい内容はこちら