日本の漫画界を代表する巨匠、手塚治虫が死の直前まで病床で綴っていた日記の、最後のページに書かれていた「トイレのピエタ」。幻の構想を原案とした同名小説が、人気ロックバンド「RADWIMPS」のヴォーカル&ギター野田洋次郎さんと、若手演技派女優の注目株である杉咲花さんを主演に迎え映画化されました。5月21日(木)、丸の内ピカデリーでプレミア上映会が行われ、原作者でもある松永大司監督、主役の二人に加え、リリー・フランキーさん、市川紗椰さんが舞台挨拶し、作品に寄せる思い、制作秘話を語りました。
癌の宣告を受けた患者が、何一つできないままに死んで行くのはばかげていると、病院のトイレに天井画を描き出す――。映画『トイレのピエタ』は、“マンガの神様”のそんなアイディアにインスパイアされ誕生しました。余命宣告をされた青年と孤独な少女が世界の片隅で出会い、互いにしがみつくようにして恋ではない恋をする様を映し出す、青春の儚さを描いた恋愛映画です。
主役の園田宏を演じた野田さんは、本作でスクリーンデビュー。
「監督に出会ったのが2年前。脚本を読んで、“素晴らしい作品だな、関わりたいな”と思って、それから1年間、監督と喧嘩したり仲直りしたり恋愛みたいな関係を続けて、そして撮影をして素晴らしいキャストの方たちに出会って。本当に僕の人生にとってかけがえのない作品になったので今日を迎えられて幸せに思います」と長きにわたって関わった作品の完成披露を、心から喜びました。
ヒロイン宮田真衣役には、1年に渡るオーディションの末に抜擢された杉咲花さん。緊張のあまり、声が出ていないことを野田さんに指摘されながらも、「今日は来てくださってありがとうございます。監督、洋次郎さん、そして素晴らしいキャストのみなさん、スタッフ全員が本当に素敵で、この映画ができました。この映画を観て何かを受け取ってもらえたら嬉しいです。最後まで楽しんでいってください」と声を振り絞って挨拶。
宏と同室の患者を演じたリリーさんは、「完成披露試写会でこんなに若い女の人が沢山いるのは初めてです。だいたい完成披露試写会って老人しか集まらないんですけど」と笑いをとります。「それが、この映画の新しい可能性というか。こんな立派なところで完成披露試写会ができるような作品なのに、手作り感のある暖かい映画になったなと思います」と、おどけながらも喜びを表現していました。
市川紗椰さんは宏の元恋人役を演じた感想をこう述べました。
「今回初めて映画に出演させていただきましたが、こういう場も不慣れですし、現場でも至らないことばっかりだったんですけど、温かいスタッフばかりで、この作品に参加できて光栄だなと思っています」
自著を脚色し、劇映画デビューを果たした松永監督は、「今日が日本で一般のお客さんに観てもらえる初めての日です。僕にとっても洋次郎にとっても、ここにいるキャストみんなにとっても、とても特別な日になるなと思います。今日は楽しんでいただけたらと思います。本当にありがとうございます」と、感慨深い様子でした。
撮影秘話については、まず杉咲さんがこんなエピソードを披露。
「1年ぐらいかけて4、5回オーディションをしたんですけれど、初回で監督にすごく泣かされたんです」
ざわつく場内を鎮めようと、松永監督が懸命に「いや、泣くシーンだったんです」と言い訳しますが、杉咲さんは「そんなのオレにもできるって言われて、真似されたんですよ」とさらに追い打ちをかけます。そのやり取りを横で見ていたリリーさんが「そういう性癖なんですよ(笑)」とつっこむと、野田さんも「泣けば泣くほど喜ぶから」と合いの手を入れるチームワークの良さ。
形勢不利の監督ですが、最終的には杉咲さんの「でも、監督が自分と対等に向き合ってくれている感じが嬉しくて。あんなに泣かされていたのに、毎回オーディションが終わると楽しかったと思っていて。オーディションの途中で脚本を読ませていただき、絶対に出たいと思うようになったので、参加できて本当に嬉しかったです」という言葉で落ち着きました。
一方、初主演によるスクリーンデビューの感想を野田さんが、
「監督は毎月、2、3回はうちに来て、脚本の話、映画にまつわる話をしていたので、撮影初日だから緊張するとかは無かったですね」と語ると、リリーさんがすかさずコメントし、こんなやりとりに展開。
「それが監督の演出でもあったのかもね」(リリーさん)
「そのままの洋次郎で行ってくれと言われていたので」(野田さん)
「よっぽど惚れられていたんだね(笑)」(リリーさん)
テンポよく会話を繰り広げる二人ですが、撮影中、野田さんはこんなリリーさんとのシーンで笑いをどう抑えるかで苦労したとか。監督も現場での二人を「すごく楽しそうなんですよ」と回想。舞台挨拶では笑いをとっていた二人ですが、劇中、入院患者役を肉体的、精神的にどう演じたかに注目したいところです。
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