天下は豊臣から徳川へ──。重なりあった不運の末に、あえなく伊賀を追い出され、京(みやこ)でぼんくらな日々を送る“ニート忍者”風太郎(ぷうたろう)。その人生は、1個のひょうたんとの出会いを経て、奇妙な方向へと転がっていく。 やがて迫る、ふたたびの戦乱の気配。だましだまされ、 斬っては斬られ、燃えさかる天守閣を目指す風太郎の前に現れたものとは──。
忍者
慶長五(1600)年、関ケ原の戦いに勝利した東軍の総大将・徳川家康は慶長八(1603)年に江戸幕府を開いた。一方、天下の覇権を奪われた豊臣家の領地は摂津・河内・和泉65万石のみに減ぜられたが、亡き秀吉の嫡男秀頼は大坂城にとどまり、西国にはいまだ豊臣家の影響力が強く残っていた。家康は慶長十(1605)年に征夷大将軍の座を秀忠に譲り、大御所として駿府に隠居した。 しかし実質的には元和二(1616)年の家康の死まで院政状態が続いていた。