オックスフォード大学につとめる著者がつきとめたその遺伝子は、世界的なセンセーションを呼んだ。その「遺伝子」をもっていることが、人生の成功の秘訣なのか。人生を肯定的にとらえる楽観的な性格をつくりだすと考えられた「セロトニン運搬遺伝子」の発見。ところが、この「遺伝子」の働きの仕組みは、ある俳優が著者の実験に参加することで大きな修正を迫られることになる。パーキンソン病にもめげず、カムバックしたマイケル・J・フォックス。その意外な実験の結果とは? 私たちの常識を覆す最新の脳科学の知見を、スリリングな物語とともに贈る「知のベストセラー」ここに参上!

2017.08.04
文庫化されました
2015.07.23
7月24日より東洋経済オンラインで、フォックス教授の特別コラムが掲載されます。

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  • 第一章 快楽と不安の二項対立
  • 自分はがんだと信じた人が、誤診だったのに本当に死んでしまった。強すぎる恐怖は人を殺しさえする。快楽を追う回路と危険を避ける回路のせめぎあいという原理が、人間の脳を理解する鍵になるのだ

  • 第二章 修道院の奇妙な実験
  • 修道女の若い頃の自叙伝を六〇年後に検証した調査がある。分析してみると、陽気で明るい修道女は、暗い同僚より平均で一〇年も長寿だった。楽観的な神経回路は健康や人生の成功までもたらすのだ

  • 第三章 恐怖を感じない女
  • 一見ごく普通の女性、リンダ。実は彼女は危険や恐怖をほとんど認識できない。彼女の脳は「扁桃体」が損傷しているのだ。恐怖や不安の根源である扁桃体の働きが性格を左右することがわかってきた

  • 第四章 遺伝子が性格を決めるのか
  • わたしの調査で「セロトニン運搬遺伝子」が楽観的な性格をもたらす可能性が浮上した。研究は一躍話題になったが、不屈の楽観主義者M・J・フォックスの遺伝子検査からは、意外な結論が導かれた

  • 第五章 タクシー運転手の海馬は成長する
  • 一度形成された脳細胞は増えないという常識に反して、複雑な道を記憶したタクシー運転手の「海馬」は著しく肥大していた。脳は経験で変化する可塑性を備え、悲観的な神経回路さえ変えられるのだ

  • 第六章 抑うつを科学で癒す可能性
  • 環境が変われば遺伝子の発現度も変わり、脳が物理的に変化する。ならば、科学が検証した様々なテクニックで脳を再形成してやれば、抑うつや不安症を治療して人生を変える可能性があるかもしれない

著者近影

エレーヌ・フォックス

心理学者、神経科学者。なぜ逆境に強く前向きな人と、後ろ向きで打たれ弱い人がいるのかという疑問を、脳科学と遺伝子工学のアプローチから研究する。エセックス大学を経て、教授としてオックスフォード大学・感情神経科学センターを率いる。心理学と神経科学を組み合わせて脳と感情の関係に迫り、セロトニン運搬遺伝子が楽観的な性格を生むという論文はセンセーションを巻き起こした。(その後、この研究は意外な展開を見せた。詳しくは本書の本文で)『ネイチャー』『サイエンス』や『エコノミスト』まで含む一流誌に数多く寄稿。2010年には俳優のマイケル・J・フォックスのドキュメンタリー番組に登場、2015年7月にはNHK Eテレの『白熱教室』で一般向けに脳科学の最先端をわかりやすく講義するなど、幅広く活躍する。