佐伯泰英 時代小説短編集『めじろ鳴く』

老剣客武蔵ここにあり

著者初となる短編集ついに刊行! 老剣客·宮本武蔵最後の闘いを描く表題作、書き下ろし新作「妻手指(えびらさし)」ほか珠玉の全六編を収録。
老いた剣豪の気骨、紅職人を志す女の矜持、若き侍からほとばしる熱情……佐伯泰英は短編も面白い!

【著者初の短編集】

めじろ鳴く
めじろ鳴く
2026年1月5日発売

【収録作紹介】

「めじろ鳴く」
老境にあるかつての剣豪・宮本武蔵のもとを柳生十兵衛の門弟が訪ねてきた。……天下の剣を極めた柳生が今さら何を企んでいる? 訝しむ武蔵はしだいにこの門弟に心を許していく
「寒紅おゆう」
女を嫌う職人衆の世界に飛び込んだおゆう。彼女の造る紅は女心を捉えて人気を博するが、おゆうを追う謎の男の影が
「虚けの龍」
下士の三男坊ながら、十六の若さで「龍」と称されるほどの剣の腕をもつ惣三郎。師は彼に「無殺多生の剣を極めよ」と諭す
「手毬」
参勤交代の道中、家紋の入ったお鎗(やり)の穂先が強奪された。事件の背景には、国替えに伴う悲劇が
「寛政元年の水遊び」
水泳に興じる少年たちが、水戸藩に関わる秘密を耳にしてしまう
「妻手指(えびらさし)
武者修行中の父が騙し討ちに? 悲報を受け、一路、大坂へとむかう青年剣士を待ち受ける困難とは――書き下ろし新作

読み応えある珠玉の時代小説全6編は、佐伯泰英入門にもぴったりです!

著者より

著者近影

 新年明けましておめでとうございます。


 昭和17(1942)年2月に生を受けた小生、7回めの年男です。
 今年こそは、過大な自然災害や戦争が世界じゅうから少しでも消失することを祈念いたします。


 物心ついたのは先の大戦の最中、空襲の恐怖より常に腹を減らしていた記憶しかない。小学校にあがったころは、まだ給食がなく、弁当持参。しかし、クラスで7、8人の生徒が弁当を持参できず、昼休みには教室を出て運動場で遊んでいた光景を思い出す。なんとか飢えの記憶が薄れたのはわたしが中学に入学した1950年代の半ばではなかろうか。


 スポーツなどの世界は別にして、他人と過剰に競い合う必要はあるまいと思う。おのれの進みたい道を見つけて、ゆったりと生を歩んでいけばいいのではないか。わたしは新聞販売店の跡継ぎであったが、母や姉や義兄たちは、「やっちゃん、好きな道に進みな」と日大芸術学部に入学することを許してくれた。ゆえに、ただ今の「時代小説家佐伯泰英」が存在するのだ。家族の寛容さに今も感謝している。


 80代に入り、最晩年に差し掛かった身だが、このたび、新たな挑戦として、初の短編集『めじろ鳴く』を刊行することとなった。同年代の読者のみなさんも、もし気力と体力があるならば、し残した分野があるならば、挑戦してみてはどうだろうか。結果はどうでもいい、挑む心が次なるなにかを生み出す気がする。 


『めじろ鳴く』のあとがきにも認めたが、歳月は「そのとき」のために密やかに流れ続けていたのだ。執筆した折にはかたちにならなかった作品と、新たに書き下ろした一編とが出会い、一冊の本として届けられることは実に感慨深い。
 そう、醸造されたばかりのウィスキーが古樽のなかで名酒に変化するかのようだ。
「Viva、時の流れよ」
 ちと大仰か。

佐伯泰英

作品一覧

著者紹介

佐伯泰英

1942年、北九州市生まれ。 日本大学芸術学部映画学科卒。デビュー作『闘牛』をはじめ、滞在経験を活かしてスペインをテーマにした作品を発表。99年、時代小説に転向。「密命」シリーズを皮切りに次々と作品を発表して高い評価を受け、〈文庫書き下ろし 時代小説〉という新たなジャンルを確立する。2018年、菊池寛賞受賞。おもな著書に、「居眠り磐音」「空也十番勝負」「酔いどれ小籐次」「新・酔いどれ小籐次」「照降町四季」「柳橋の桜」「助太刀稼業」「密命」「鎌倉河岸捕物控」「吉原裏同心」「夏目影二郎始末旅」「交代寄合伊那衆異聞」「古着屋総兵衛影始末」「新・古着屋総兵衛」各シリーズなど多数。

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