決定版刊行に際して

「居眠り磐音」によせて

佐伯泰英作品 初の映画化! 映画「居眠り磐音」◎佐伯泰英作品 初の映画化! 映画「居眠り磐音」

平成最大の人気シリーズに著者が手を入れ、一層の鋭さを増し“決定版”として蘇る!

お知らせ

2019.03.07
2019年3月8日『寒雷ノ坂』『花芒ノ海』が発売されます
2019.02.08
「決定版刊行に際して」を公開しました
2019.02.08
2019年2月8日『陽炎ノ辻』が発売されます
2019.01.10
「居眠り磐音」によせてを公開しました
2018.12.25
2019年1月4日『奈緒と磐音』が発売されます
2018.12.25
「居眠り磐音」決定版刊行記念 プレゼントキャンペーン2019実施中
2018.12.25
特設サイトが公開されました

著者紹介

佐伯泰英

1942年、北九州市生まれ。 日本大学芸術学部映画学科卒。デビュー作『闘牛』をはじめ、滞在経験を活かしてスペインをテーマにした作品を発表。99年、時代小説に転向。「密命」シリーズを皮切りに次々と作品を発表して高い評価を受け、〈文庫書き下ろし 時代小説〉という新たなジャンルを確立する。2018年、菊池寛賞受賞。おもな著書に、「居眠り磐音」「酔いどれ小籐次」「新・酔いどれ小籐次」「密命」「吉原裏同心」「夏目影二郎始末旅」「鎌倉河岸捕物控」「交代寄合伊那衆異聞」「古着屋総兵衛影始末」「新・古着屋総兵衛」「空也十番勝負 青春篇」各シリーズなど多数。

決定版刊行に際して

 第一作『居眠り磐音 江戸双紙 陽炎ノ辻』が刊行されたのが平成十四年(二〇〇二年)四月、最終の五十一巻『旅立ノ朝』が完結したのが平成二十八年正月だ。あれから三年が経った。

 このたび文春文庫『居眠り磐音』として決定版を刊行することになった。

 私なりの文庫書下ろし時代小説スタイルが落ち着いたとき、書いたのが『居眠り磐音 江戸双紙 陽炎ノ辻』だ。むろんシリーズ化など念頭になかった、といえば嘘になる。だが五十一巻もの大長編シリーズに化けるなど筆者も出版社も夢想だにしなかった。


 今回版元を変え、シリーズ名を『居眠り磐音』決定版として文春文庫から刊行することになったには理由がある。せっかちな作者が早書きしたシリーズを新たな視点から見直したいと思ったからだ。

 出版界に生き残るため二十日余りで一作脱稿してきたのだ。編集者氏や校閲者も見落とした矛盾や登場人物のキャラクターのぶれなど多々あると思う。この責任は偏(ひとえ)に作者にあるのだが、まっさらの視点で坂崎磐音の物語を読んで頂き、手直しできるところを手直ししたいと私は考えたのだ。そこで版元を変えさせてもらった。

 折しも事務所を整理していた娘から、「流言」と私の筆跡で書かれたフロッピーディスクが見つかったと知らせてきた。なんと『いねむり磐音江戸日誌 炎熱御番ノ辻』のタイトルのフロッピー原稿だった。つらつら考えるに『居眠り磐音 江戸双紙 陽炎ノ辻』の試し原稿か。冒頭を読むと、

「安永九年(一七七二)四月下旬、豊後関前城下と関前湾を遠くにのぞむ峠道に三人の若い武士が涼をとっていた」 

 と始まっているが、正しくは「明和九年(一七七二)四月下旬」でなければならない。「流言」は第一章の章見出しだった。

 決定版刊行に際して現れたフロッピーディスクは、私の試行錯誤や模索を如実に見せている。タイトル『いねむり磐音江戸日誌 炎熱御番ノ辻』が示すように力が入って気張っている。坂崎磐音の人物像が未だ定まらないままに書き始めたのだろう。

 このフロッピーディスクの第一章の「流言」を読んで思い出した。これは短編として私が時代小説に初めて手を染めた一篇だったのだ。だが、持ち込んだ先の出版社編集者氏に、

「佐伯さん、短編というのはね、老練な文章の名手の大作家が書くもの、これはただ短いだけ」

 と酷評されてつき返された原稿だった。


 私は「流言」を苦し紛れに長編の冒頭に利用しようと考え、『いねむり磐音江戸日誌 炎熱御番ノ辻』の第一章に持ってきたのだろう。

 改めて『居眠り磐音 江戸双紙 陽炎ノ辻』を読み直してこの作品が長編シリーズ化した理由を私なりに考えた。

 一つは主人公坂崎磐音と許婚の奈緒との別離だろう。奈緒のことを深く想う磐音の気持ちが次作に繋がったのではないか。

 もう一点は老中田沼意次との確執が物語を長編へと展開させたのではないか。本作『陽炎ノ辻』では新進の幕閣の一人として政(まつりごと)を真摯に考えていた田沼意次が段々と権力の魅力に取り憑かれるという私の勝手な解釈でシリーズの悪役に据えたことが五十一巻の長大な物語になったと思う。

 久しぶりに本シリーズを通読した作者は、

「結構面白いではないか、私がこんな小説を書いたのか」

 と恥ずかしながら感動している。

「はい、面白いです」


 この文春文庫『居眠り磐音』決定版に合わせ、二〇一九年五月十七日には松坂桃李君が坂崎磐音役で映画『居眠り磐音』が公開される。

 文庫決定版刊行と映画製作がもう一度このシリーズに新たな息吹を与えてくれればと原作者は切に願う。


 ともあれ『居眠り磐音』決定版は見直し刊行が始まったばかりだ。長いシリーズ同様に再び長期戦となる。

 決定版完結と作者の老化進行との争いになりそうだ。ともかく体調に留意して決定版刊行終結を目指す覚悟です。

佐伯泰英

映画情報

佐伯泰英作品 初の映画化! 映画「居眠り磐音」

2019年5月17日(金)全国公開
主演:松坂桃李
監督:本木克英
配給:松竹

佐伯泰英作品 初の映画化! 映画「居眠り磐音」

2019年刊行スケジュール

決定版は全51巻を、文春文庫から毎月順次発売します。
新作 は書き下ろし新作です。

1月
新作『奈緒と磐音』
2月
1巻『陽炎ノ辻』
3月
2巻『寒雷ノ坂』
3巻『花芒ノ海』
4月
新作『武士の賦(もののふのふ)
4巻『雪華ノ里』
5巻『龍天ノ門』
5月
6巻『雨降ノ山』
7巻『狐火ノ杜』
6月
8巻『朔風ノ岸』
9巻『遠霞ノ峠』
7月
10巻『朝虹ノ島』
11巻『無月ノ橋』
8月
12巻『探梅ノ家』
13巻『残花ノ庭』
9月
14巻『夏燕ノ道』
15巻『驟雨ノ町』
10月
16巻『螢火ノ宿』
17巻『紅椿ノ谷』
11月
18巻『捨雛ノ川』
19巻『梅雨ノ蝶』
12月
20巻『野分ノ灘』
21巻『鯖雲ノ城』