あらすじ

おちかと同じ年のころの娘が、三島屋を訪れた。聞けば、自分が幼馴染のところへ嫁に行く前に、誰かにどうしても聞いてほしい話があると言う。それは、娘の祖母がいた岩槻にある、必ず男の気持ちが離れてしまうという池にまつわる言い伝えだった。そして、娘は、戒めを守らなかった祖母の身に起きた不思議な話を語り始める。

灯庵が連れてきた今回の客は、老境に差し掛かった上方の出の商人と妻。妻を次の間に置き、語りはじめた商人は、漁師町の生まれであったが十歳の頃に山津波で、一族親類を亡くし、天涯孤独の身となって地元の網元の屋敷へと引き取られることとなった。だが、大きく古い網元の屋敷で、不可思議な出来事に遭遇することとなる。

三島屋で瀕死の老人が行き倒れた。店総出の看病の甲斐もあって、ようやく息を吹き返した老人だが、よくよく聞けば三島屋の評判を聞いて訪れたとのことだった。ようやく身を起こすまでに回復した老人が、虫の息ながら、意を決したように語り始めたのは、老人が引き取った、ある幼子についての、哀しくも恐ろしい話だった。

黒子の親分がやってきて、「心の煤払い」と称して札差が主催する怪談語りへとおちかを誘う。最初は、出かける気もないおちかだったが、青野の若先生も来ると聞き、心が動く。その様子を見た三島屋の連中もなんとか、おちかを送り出そうとやっきになり、おちかは、お勝を連れていくことを条件に怪談語りの会へと向かうことにする。

北国生れの侍が、おちかの評判を聞いてやって来た。おちかから見ると少年にすら見える侍は、なぜか落ち着かずなかなか顔を上げてくれない。なんとかとりなそうとするおちかの様子に、ようやく話はじめた侍は、顔を真っ赤にしながら、お国訛りで故郷の山で出会った、江戸では思いもよらない獣の話を訥々と語り始めた。

半年前に夫を亡くしたという女が話を聞いてほしいと三島屋を訪れた。だが、語りたいのは夫についてではなく、自分の叔父の身に起きた出来事であるという。叔父は長男だったが放蕩の限りをつくし、生家を追い出されたが、なぜか、三十半ばを過ぎたころ正気を取り戻し、兄弟である女の父を頼って、三両で一年だけ身を置かせてほしいと頼みに来たという。

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