橋を渡る
東京の中心「八谷町」で妻と暮らす新宮明良は、ビール会社の営業課長。
部下からも、友人からも信頼される、大人の男。
そんな彼の家に、謎めいた贈り物がつづく。
「家の前に日本酒が置いてあるけど」「こんどは米?」
妻・歩美の経営する画廊に絵を持ち込んで断わられた画家・朝比奈達二のしわざなのか?
東京都議会議員の夫と息子を愛する赤岩篤子。息子のスイミングスクールにつきそい、ママ友とボランティア活動に打ち込むよき妻、よき母。でも、彼女には、夫が都議会で「なかったことにされたセクハラ野次」を飛ばした本人ではないか、という、ひそかな不安があった。
やがて彼女は知る。大切な人の不正や、裏切りを。
「もしもし『週刊文春』さん? 今週号、スクープないじゃありませんか。もっともっとニュースを読ませて! みながセクハラ野次事件を忘れるように!!」
愛する人を守ろうと自分に言い聞かせながら、篤子は心身のバランスを失っていく
テレビの報道ディレクター、里見謙一郎。正しさを追い求め、歌舞伎町で生きる女の子や、香港の雨傘革命を取材している。万能細胞の研究者・佐山恭二教授にも、「STAP騒動のように、興味本意で番組を制作するつもりはありません。佐山教授の、iPS細胞から精子・卵子を作り出す生殖医療研究を取材させてください」と粘りづよく交渉している。
ある日、謙一郎は、「週刊文春」編集部につとめる友人の水谷から、結婚を控えた薫子が、和太鼓サークルの主宰者・結城と会っているのではないかとほのめかされる。俺に黙って、なぜ?
『橋を渡る』の主人公たちの心のつぶやきを、「週刊文春」連載時の挿絵とともにご紹介します。画像をクリックしてください。