毛利藩を飛び出した武士コンビの冒険! 金もコネもない二人の旅のゴールは?「助太刀稼業」シリーズ
藩を追われた下士と家宝を持ち出した毛利家の三男坊 金もコネも情報もない二人が、世の中に飛び込む!果たして「助太刀稼業」の行く末は。負け組コンビに未来はあるのか?

著者より

著者近影

「助太刀稼業」シリーズがかように三巻目『新たな明日』にて完結しました。


 わが時代小説は舞台が江戸後期という設定だけで、現代小説とどう違うかと問われれば、「さあて、どうでしょう」と作者自身が首を捻るしかない。特に助太刀稼業はそんな若い男女ふたりの生き方で格別に「時代小説」と断る要もない。


 正直に告白すると毎夜毎夜見る夢の残滓がわが時代小説と呼んでもいいかと思う。助太刀稼業三部作も、起床しパソコンに向き合った折りに頭に残っていた記憶があちらこちらに飛び跳ねて変じたものだ。とは申せ、夢がわが小説と変じるならば気楽な稼業と呼びたいが、そうはいかない。大半の夢は目覚めた折りには消失しているのだ。


 あとひと月半もすれば八十三歳を迎える。老年兵として先の大戦の末期に応召された父や、父の留守中、細やかな新聞販売店を守った姉、私、そして妹の三人を育てた母も、ただ今の私の年齢を迎えることはなかった。


 今やわが日本は長寿国の上位常連国だ。そんな余禄の恩恵をうけてか私も馬齢を重ねている。その一助か、助太刀稼業三部作の完結巻『新たな明日』を刊行できた。


 世界じゅうを見渡せば思い出したくない出来事ばかりが繰り返されている。
 (おまえさんの描く暮らしなど然々あるものか)
 と言われようと嫌なことを一時でも忘れられる小説を書き続けたい。


佐伯泰英


デザイナーの言葉

時代小説のカバーで大事なのは読者に向けてはわかりやすく、安心して購読いただくことだと考えています。新シリーズ「助太刀稼業」のカバー制作にあたって、まず複数案を考えました。

佐伯さんともお話しする中でさらにそこから思いもよらなかった“デザインの大海”へ出ることに。

編集部や営業部の意見も聞きながら、さまざまな方面で点検して引き算をしながら新しい試みを加えるうち、シリーズを並べたときにもっとも楽しんでいただく計画へたどりつきました。

既存の書体を「手描きの文字」に切り替えて、文春文庫の佐伯作品には欠かせない横田美砂緒さんのイラストレーションを大きな文字の中心にレイアウトしました。

主人公の嘉一郎が未知の世界へ飛び出す勇気と、さまざまなものに出会う豊かな読書体験を体現できたと考えています。

文庫のフォーマットのルールというものがありますが(流通しやすく、売りやすい)、ここまで自由度が高いデザインを実現できるのは、佐伯さんをはじめ各部署の理解と力添えがあってのものです。

新しい装丁を考えることには正解がありません。これからも『助太刀稼業』カバーで得た経験を生かして挑戦し続けたいと思います。

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