宇宙が始まる前には何があったのか?
ビッグバンの前には何があったのか? その最大の謎を、現代の量子物理学は解きあかしつつある。物質と反物質のわずかな非対称から生じたゆらぎ、それが今日の私たちの宇宙を形づくった。それは無から有が生まれることであり、無からエネルギーが生じるという物理学の常識に反したことだった。
- 2016.12.26
- 2017年1月6日に文庫が発売されます
- 2015.6.5
- 6月5日から「宇宙白熱教室」の再放送が放映されます
- 2014.6.18
- 6月20日よりNHK Eテレにて4週連続「宇宙白熱教室」が放映されます
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- 第一章 いかに始まったのか?
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始まりの一秒。百億度のプラズマ状態。陽子と中性子が結びついては、さらなる衝突のために再びバラバラになる。ビッグバン・モデルからさかのぼる原初の宇宙の状態とは……。
- 第二章 いかに終わるのか?
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「開いた宇宙」「閉じた宇宙」「平坦な宇宙」のいずれかで、終末のシナリオは3つある。この予想の鍵を握るのが、目に見えない大量の暗黒物質だ。その正体を捉まえることはできるのか。
- 第三章 時間の始まりからやってきた光
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生まれてまもない高温の宇宙で発せられた光の残照、それが宇宙マイクロ波背景放射である。宇宙誕生の瞬間を見ることは不可能だ。しかし、誕生から30万年後の姿は見ることができる。
- 第四章 ディラックの方程式
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ミクロなスケールで世界を記述する量子力学。そこでは、何もないところから仮想粒子が生成消滅する。特殊相対性理論と量子力学を結び合わせたディラックは、宇宙の始まりにも関係する重大な発見をする。
- 第五章 99パーセントの宇宙は見えない
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エネルギーを含んだ空っぽの空間の中に、「暗黒物質」の海があり、わずか一パーセントの目に見える物質がその海の中に浮かんでいる。それが現在の物理学が到達した宇宙像なのである。
- 第六章 光速を超えて膨張する
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われわれが観測可能な宇宙も、膨張の速度が早まり、やがて光速を超える。アインシュタインが課した制限速度も、空間そのものにはあてはまらない。
- 第七章 二兆年後には銀河系以外は見えなくなる
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宇宙がこのまま膨張し続けると、二兆年後にはすべての天体が遠ざかり姿を消す。ビッグバンの手がかりも消えるだろう。われわれは宇宙を観測できる貴重な時代を生きているのである。
- 第八章 その偶然は人間が存在するから?
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インフレーションモデルやひも理論によると、宇宙はひとつではなく無数に存在するという。とすると、われわれの宇宙は、人間が存在するのに適した宇宙に過ぎないのではないか。
- 第九章 量子のゆらぎ
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現在の量子力学は、何もない場所に量子のゆらぎが生じ、あらゆる構造を生むことを説明する。つまり、何もない場所が何らかのエネルギーを持つことができるということだ。
- 第十章 物質と反物質の非対称
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量子力学と相対性理論によれば、物質に対応する反物質は必ず存在し、それは打ち消しあう。しかし、ビックバンの最初の状態ではわずかな非対称があった。それがわれわれを生んだのだ。
- 第十一章 無限の未来には
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何もない場所から、何かが常に生まれている。しかし、おそらく遠い未来には、無がふたたび宇宙を支配することになりそうだ。
宇宙物理学者。アリゾナ州立大学にて「起源プロジェクト」を創設し率いる。1995年、「真空のエネルギーは、非常に小さいがゼロではない」という大胆な説をマイケル・ターナーとともに提唱。当時は異端視されたが、後に見事、実証される。また、「科学は神を信じないことを可能にする」という反神論者の立場から、不可知論者のリチャード・ドーキンスとともに、神学者や哲学者と真っ向から対決しディベートを重ねる。
アメリカの物理学における「顔」でもある彼が、本書の原題と同じ「A UNIVERSE FROM NOTHING」とのタイトルで行った講演は、YouTubeで150万pvを超え、センセーションを巻き起こす。著書に『物理学者はマルがお好き』、『ファインマンさんの流儀』などがある。2012年には全米科学審議会から「公益賞」を授与された。
1956年、山形県生まれ。京都大学理学部卒、同大学院修了。理学博士。翻訳家。主な訳書にサイモン・シンの『フェルマーの最終定理』『暗号解読』『宇宙創成』、ブライアン・グリーンの『宇宙を織りなすもの』、マーシャ・ガッセンの『完全なる証明』、マンジット・クマールの『量子革命』など、専門の理論物理学を活かしたものから、数学、分子生物学まで、科学書をもっとも美しく訳す訳者としてファンは多い。「幅広い層に数学への興味を抱かせる本を翻訳して、数学の普及に大きく貢献している」として2007年の日本数学会出版賞を受賞している。著書に『宇宙はなぜこのような宇宙なのか』がある。