2011.05.20 書評

この国難を如何に乗り越えるか

文: 藤井 聡 (京都大学教授)

『列島強靭化論――日本復活5カ年計画』 (藤井聡 著)

 日本は今、「国家存亡の危機」に直面しています。その理由の一つはもちろん、損失額数十兆円と推計されている東日本大震災です。しかし我が国は、その何倍もの被害をもたらすことが危惧される「東海・南海・東南海地震」や「首都直下型地震」の危機にも直面しています。それらが30年以内に発生する確率は、前者が50~87%、後者が70%で、かつその確率は今回の大地震によって大きくなっているとも言われています。そしてあろうことか「富士山の噴火」の危機も迫って来ているのです――。

 これらは皆、何も空想でも絵空事でもなく、科学的な根拠のある事実なのです。

 筆者は、3月11日以降、日本がこうした国家存亡の危機を如何にすれば乗り越えられるかを考え続けてきました。本書はその内容を一般の方に向けてとりまとめたものです。

 本書の骨子は、本年3月23日に開催された参議院予算委員会公聴会での、筆者の国会公述内容に基づいています。

「公聴会」というのは、国会での決議の前に、学識経験者等から意見を聴くための機会で、国会法にてその開催が定められています。当初この公聴会は、3月15日に予定されていました。

 しかし、かの3月11日、我が国は東日本大震災に見舞われてしまいました。筆者は11日、12日、13日と、ニュースで次々と流される未曾有の被害の数々を目の当たりにして、ただ茫然とするばかりでした。そして、国会での審議は当面見送られ、公聴会も延期となりました。しかしその後、「3月23日」に開催するとの連絡が入って参りました。

 筆者はその時、今この国会で学識経験者に求められているのは、次年度の国家予算だけではなく、この「国難」を乗り越えるために必要な当面の予算枠組み全体の基礎となる「長期ヴィジョンの提示」なのではないかと思い至りました。無論、残された時間は10日しかなく、かつ、筆者にそれが可能かどうか心許(もと)なく感じましたが、逆に言えば、10日もあれば十分に可能ではないか、とも考えました。

 こうして筆者は、経済、産業、巨大災害、国土計画といった様々な(筆者がよく存じ上げている)専門家の皆さんと意見交換を重ねながら『日本復興計画~「東日本復活5年計画」と「列島強靭化10年計画」』を緊急提案として策定し、これを公述致しました。この計画は、東日本と日本経済を5年で復活させ、これからさらに訪れるであろう数々の巨大震災をも乗り越えうる「強靭さ」を10年で手に入れるためのものでした。

列島強靭化論
藤井 聡・著

定価:798円(税込) 発売日:2011年05月20日

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