2013.07.11 インタビュー・対談

堺雅人の書くこと、演じること

聞き手: 「本の話」編集部

『文・堺雅人2 すこやかな日々』(堺雅人 著)

堺雅人の書くこと、演じること

――初エッセイ『文・堺雅人』から実に4年ぶり。タイトルには『文・堺雅人2』とあり、まさしく「待望の続編」として、とても面白く読みました。

 前作は「月刊TVnavi」で2004年の年末から2009年はじめまで、4年以上連載したものがもとになっています。今回もやはり2009年秋から4年ほど、女性誌「CREA」に毎月連載したものをまとめました。

――連載ということは毎月、締め切りがあると思うのですが、原稿はどんなときに書かれるのでしょう。

 楽屋で書くこともありますが、喫茶店が多いです。カバンに原稿を書くためのグッズが入っていて、仕事のあいまにちょっと空き時間ができたら喫茶店に入って、それを広げる。 ずっと考えていて、書きだすまでにけっこうかかるんです。

――はじめの回は映画『ゴールデンスランバー』の撮影の頃で、最後は今年春に放送された「スペシャルドラマ リーガル・ハイ」。本業がとても忙しい中、そのお仕事に対する真摯な考察のような文章が生み出されています。堺さんのエッセイは、いわゆるプライベートや自分の素を語るスタイルではないですよね。

 そうですね。自分の事はあまり書かない、書きたくない。きっとこれは、「レポート」なんでしょうね。

――本文中でご自身について「『しらべ、分析し、コトバで説明したがる』俳句俳優」と書かれていますね(“俳句俳優”については本書「モゴモゴばなし」参照)。映画『ツレがうつになりまして。』撮影中に、中国の古典『中庸』やシェークスピアの『ハムレット』のことを考えておられたりと、たしかに研究レポートのような感じがあります。

 「書く」ことは、僕にとって「演じる」ための準備になっているところがあって。まず論理的に考えて、演じるときには、全部投げ捨てる。たとえば、村上春樹さんの『1Q84』についての読書感想文を書いた回もありますが、これもドラマ「ジョーカー 許されざる捜査官」で役を演じるとき、何を大事にしていたのか、ということなわけで。この回は、本にする際に、後半をかなり書き直しました。今回、けっこう書き直したところがあります。原稿は、自分のために書いている、というところもあるんです。もちろん、読みやすく、読んで楽しい文章になるような配慮はしていますが。

――作品を純粋に楽しんだ後に、堺さんの文章を読むと「そうだったんだ!」という驚きがあったり、その上でもう一度作品を見ると、自分では気づかない点に気づいたりして、それは読者にとって幸せな体験だと思います。

 そうだと嬉しいです。そうやって楽しんでいただければ。

――ところで、堺さんの文体の特徴の1つに、カギカッコが上にくるように改行されるスタイルがあります。たとえば映画『クヒオ大佐』について書いているところで、

 この人物は僕に
 「中年の悲哀」
 みたいなものを思わせた。

 とあったり。素人考えなのかもしれませんが、これは台本のスタイルと似ていたりするのでしょうか?

 いや、そういう台本は少ないと思います。文章と言うより会話体が多い作家の方も多いですし。僕のイメージでは、むしろ、教科書とかの書き方というか……。上から「ローマ帝国」と書いて、「なんとかかんとか」と続ける。そしてまた上から「カラカラ帝が」と書いて、「なんとかかんとか」……っていう。そうやって一個ずつ、大切なことを板書していくような感じなんです。

――なるほど! 重要だから上から書く、黒板の板書のようなということだったんですね。

 そうだと思います(笑)。

――最後に、本にするにあたり、3年7カ月の連載を振り返ってどんなことを思われましたか。

 連載がはじまったのが役のためにタバコをやめた頃で、食やカラダのことをよく考えていました。自分はだんだん「すこやか」に傾きつつあるけれど、それはいいことばかりではないのでは、という思いもあったり。それが、タイトルにもつながりました。ちょうど真ん中に震災があったことも、大きかったです。あれからずっと、自分の中に3.11をどうとらえるかということがあって、仕事にも影響しています。1分1秒とめまぐるしく状況が変わる中で、月に1度、1つの文章を書くことがとっても大切なことだとも感じました。非常に重荷ではあるのですが(笑)、続けていきたいですね。

文・堺雅人2 すこやかな日々
堺 雅人・著

定価:1470円(税込) 発売日:2013年07月11日

詳しい内容はこちら   関連記事はこちら(CREA WEB)