2009.12.20 インタビュー・対談

老人と幼稚園児の不思議な交流

聞き手: 「本の話」編集部

『ひまわり事件』 (荻原浩 著)

老人と幼稚園児の不思議な交流

──荻原さんの最新刊『ひまわり事件』は、主要な登場人物が老人と幼稚園児の物語です。年の差が七十近くもある二つの世代を今回登場させたのは、どのようなきっかけがあったからなのでしょうか。

荻原  最初にまずあったのは「老人を書きたい」ということでした。とにかく老人たちのいろいろなシチュエイションが頭に浮かんでいて……。それは自分がだんだん年をとってきて、老後やこれからの人生を考え始めたということも大きいと思います。

──「老人と子供」ではなく、発想としてまず「老人」が先にあったのですね。

荻原  はい。でも「老人」と一口にいっても、実際には自分が子供の頃にイメージしていたものとは大きく変わってきている。今のジジババは総じて元気だし、自分もこれから年をとっていくにせよ、枯れた老境のようなものに達するとはとうてい思えない(笑)。年老いたら「残り時間」が少なくなるという現実はもちろんあるけど、最後までジタバタするのではないかという考えが、作品を書く前からありました。 

現代の老人と幼稚園児の感覚の違い

──老人だけでなく、幼稚園児を登場させたのは?

荻原  最初に「老人」を思いついて、次にその対極の存在は何かと考えたんです。それは頭の中がまだ原始の混沌状態である幼稚園児ではないかと。そしてそんな何を考えているのかわからない子供と老人が出会ったら、どれほどコミュニケーションがとれないか――そんなことをいろいろと考えました。

──幼稚園児は荻原さんにとっても約五十年の年齢差がある存在です。幼稚園児の晴也(せいや)や伊梨亜(いりあ)たちを描くのにご苦労はありませんでしたか。

荻原  自分の子供が小さいときの記憶がまだありましたし、特別な苦労はありませんでした。雑誌連載が始まった後で保育園を見学したことがありましたが、予想どおり子供たちはアホだった(笑)。かしこいな、大人っぽいなと感じることはもちろんありましたが、そのすぐ後に脱力するようなアホなことをする(笑)。自分は間違ったことを書いていないと、そのとき確信しましたね。

ひまわり事件
荻原 浩・著

定価:1890円(税込) 発売日:2009年11月14日

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