- 2009.06.20
- 書評
クリスティアーノ・ロナウド
ポルトガル航海者たちの末裔
文:竹澤 哲 (ノンフィクションライター)
『クリスティアーノ・ロナウド ポルトガルが生んだフェノメノ』 (竹澤哲 著)
ジャンル :
#ノンフィクション
今をときめくフットボーラー、クリスティアーノ・ロナウドは世界最高の選手に与えられる「バロンドール」を二〇〇八年に受賞し、また所属するマンチェスター・ユナイテッドではリーグ優勝を始め数多くのタイトルを獲得しています。彼にとってあと足りないのは、各国代表チームによって争われる世界最高のタイトル、ワールドカップぐらいのものでしょう。しかし人口一千万人あまりの小国ポルトガルには、それは少々無理な要求であるかもしれません。
そもそもロナウドのような選手がなぜポルトガルに生まれたのでしょうか。本書を書くきっかけとなったのはまさにこの疑問からだったのです。
ポルトガルサッカーは「ヨーロッパのブラジル」と呼ばれるように、もともと個人技が高いことで知られています。それは小柄な選手が多いため、できるだけボディコンタクトを避けて戦ってきたことにも由来しているようです。しかしロナウドはストリートサッカーによって磨かれた高い技術に加え、アスリートとして恵まれた身体も兼ね備えています。これまでのポルトガル人選手とは大きく異なっているのです。
ポルトガルへの特別な感情
〇八年四月、私は「ナンバー」誌の取材でロナウドの生誕地であるマデイラ島を訪れました。それよりも五年ほど前に滞在したことがありましたが、島が大きく変貌を遂げていたことにまず驚かされたのです。EUからの援助によりインフラ面の整備が行われ、特に高速道路は見違えるように整備されていました。そしてロナウドがサッカーを始めたスクールには夥(おびただ)しい数の子供たちがいて、未来のロナウドを目指してボールを追いかけているのです。しかもおそろいのユニフォームに身を包み、有名メーカーのスパイクを履いており、生活水準は以前と比べかなり上がっているようでした。ロナウドの育った時代の面影はすでに残されていませんでした。
さまざまな人々を訪ね取材を進めていきましたが、なぜか人々の話に新鮮みが感じられません。それはポルトガル国内でロナウドのドキュメント番組が放送されていたことや、世界中のジャーナリストが取材に訪れるため、すでにロナウドのサクセスストーリーは人々の間で周知の事実となり、それをあたかも自分が経験したかのように話すからでしょうか。
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