- 2015.10.16
- 書評
油断大敵! 借金返済で困らないための必読書
文:横山 光昭 (家計再生コンサルタント・ファイナンシャルプランナー)
『督促OL 奮闘日記 ちょっとためになるお金の話』 (榎本まみ 著)
このたびは文庫化、おめでとうございます。榎本さんの思いが伝わって、単行本がたくさんの方にお読みいただけたのだなと、私も監修者として大変うれしく思います。
私は「家計再生コンサルタント」と「ファイナンシャルプランナー」という2つの肩書で活動をしています。「貯金がなかなかできない人でも、家計管理を工夫して貯金ができるようになろう」というモットーを掲げ、家計において「消費・浪費・投資」が大切だとお伝えし、皆さんがお金を上手にコントロールできるよう、相談に乗ることを仕事にしています。
私自身、クレジットカードの利用などで借金を作り、お金に困った経験をしている人間です。また、過去に勤めていた司法書士事務所でも、借金に困り、泣く泣く債務整理している人達をたくさん見てきました。司法書士事務所の現場では、法的な措置をとればそこでお金に関する依頼者からの相談は終了、でした。きちんとお客さんには再起してほしいと思っていたのに、必要な手続きだけを取れば、はい終わり……。これでは本当の意味で依頼者が再起することはできないだろうと思い、2001年に自分の事務所を立ち上げました。
事務所を立ち上げた当時は、「企業再生」という言葉をよく聞く時代でした。であれば、家庭という小さな集団を再生させることを「家計再生」というのではないか、そして私の仕事は相談に応じる事だから「ファイナンシャルプランナー」というよりは「家計再生コンサルタント」というのではないか、と安易な発想で付けたおそらく日本では初めてであろう肩書を、今でもずっと自分の仕事を象徴する言葉として使っています。このように、駆け出しのころから「借金・ローンに苦しむ赤字家計をどのように再生させるか」ということを本気で考え、お金に困る人のサポーターでありたいと思い、活動してきました。
そのような思いで仕事に取り組んできたので、お金に困っている人への私の思いは榎本さんと同じかもしれないと思い、この本の監修を単行本作成の際に引き受けました。私と榎本さんには「お金に苦しむ人を助けたい」という思いが共通していると思いますが、それを青臭く偽善っぽいと感じる人も多いかと思います。でも、借金に追い込まれた人たちの生活の悩みを直接聞く立場にある私たちは、借金をしているイコールだらしがない、お金にルーズというようなマイナスイメージを持たれがちな人々の本質を理解するようになり、決して上から目線ではなく、ともに頑張りたい、知っていることは提供して力になりたい、という思いを抱くようになるのです。
本書の監修にあたり、榎本さんにお会いしたことがあります。榎本さんはおとなしい印象で、とても督促の仕事をしているようには見えません。ですが、なにか強い芯というか、軸というか、ぶれないものを持っているように感じられました。話していても、お金に困る人がいなくなるといいなと純粋に考え、助けたい、知っている知識は皆さんにお伝えし、怖くはないということを知ってほしいという強い思いがあるのも伝わってきて、これは協力しなくてはいけないと思ったのです。
私は弁護士などの法律家ではないので、借金の解決法とかお金の貸し借りの法律について偉そうな話ができる立場ではありません。ですから、監修のご依頼をいただいたときは少し迷いましたが、この本は借金問題を解決するというよりは、お金の貸し借りの基本的な知識を多くの人に幅広く知っていてほしいという内容だったので、お受けしてよかったなと思っています。