- 2014.07.15
- 書評
一番新しい時代の風を小説に
大人気シリーズ再始動
文:「オール讀物」編集部
『憎悪のパレード 池袋ウエストゲートパークXI』 (石田衣良 著)
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
〈池袋のスモークタワーをしってるかい?
そいつはJR北口から徒歩三分、二百九十円均一のデフレ居酒屋とネットに押され年金暮らしの老人しか客がいないポルノ映画館のあいだにそびえる堂々たるペンシルビルだ〉
この特徴的な冒頭を読んだだけで、お帰りなさい! と快哉を叫ぶ読者の方も多いでしょう。
そうです、ついに石田衣良さんの池袋ウエストゲートパーク(以下、IWGP)11作目、『憎悪のパレード』が刊行されるのです。
IWGPを読んだことがないという方のために少し説明を。シリーズ1本目の短篇「池袋ウエストゲートパーク」は1997年のオール讀物推理小説新人賞を受賞し、石田さんのデビュー作となりました。
池袋駅西口に店を構える果物屋の息子で“池袋のトラブルシューター”の異名を持つ真島誠(マコト)と、池袋を勢力下に置くカラーギャング集団“Gボーイズ”のヘッドで“キング”こと安藤崇(タカシ)が街で起こる様々な問題を解決していく、青春要素あり、アクション要素ありの現代版捕物帳です。2000年には、『あまちゃん』で大ブームを巻き起こしたのが記憶に新しい、宮藤官九郎さんの脚本でドラマ化され、IWGPの略称がすっかり定着。10年以上にわたり、人気シリーズとして今に至っています。
新たなステージ
今作の『憎悪のパレード』は前作『PRIDE』の刊行から3年以上という、シリーズ史上初めての長いブランクがありました。
とは言ってもただ休んでいたわけではありません。IWGPの“第2シーズン”幕開けのための準備だったのです。石田さんは再開にあたり、
〈これからのIWGPはどうしたって“苦さ”のようなものが出てくると思う。この二年で日本の状況がさらに厳しくなりましたから。(中略)
作中で明らかにしてはいないんですが、マコトやタカシって二十代中盤くらいの設定なんですね。時間を置いたことで、彼らの年齢を少し上げようかなとは考えています〉(『オール讀物』2013年2月号)
とインタビューで語っています。
実際、脱法ドラッグ店との戦いが描かれた1篇目「北口スモークタワー」でマコトは〈二十代後半に〉なり、〈正直なところ、おれにも若い奴がなぜドラッグにはまるのか、実はよくわからないんだ〉と下の世代に対する素直な感情を吐露します。
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