2005.02.20 インタビュー・対談

サワコ流おしゃべり術の秘密

聞き手: 「本の話」編集部

『ピーコとサワコ』 (阿川佐和子 ピーコ 著)

――阿川さんのことを、“口から先に生まれてきた”なんて失礼なことをいう人もいるようですが、今度の新刊『ピーコとサワコ』でも舌好調ですね。

 私、この本が出ることについちゃ、いろいろと心配なんです。

――何がですか。

 私もね、それなりに考えて仕事を選んできたつもりだったんですけど、今回は迂闊(うかつ)だったんじゃないかと。だってピーコさんの毒舌の勢いがあんまり可笑しいんですもん。つい私も同調して喋りすぎたような気がして……。私のタレント生命にかかわる出版物になるんじゃないかと、今から気が気じゃないです(笑)。

――そもそもピーコさんと知り合われたのは……?

 テレビのニュース番組でアシスタントをやってる頃に、ゲストに何回か来ていただいたんです。でもそのときは挨拶するぐらいで、それ以上の仲ではなかった。

――親しくなったのは、やはり石井好子さんとの関係で?

 はっきり覚えているのは、石井さんのシャンソンのチャリティーコンサートで司会をやらしていただいた一回目のとき、私も歌ったんですよ、大胆にも(笑)。で、緊張のあまり楽屋前の廊下を右往左往していたときにピーコさんとすれ違って、「どう?」なんて聞かれたから、さっき食べたお弁当が口から出てきそうですって言ったら、「アンタッ、汚いわねぇ!」ってすごく怒られたの。そしたらその翌朝のワイドショーで、石井さんのコンサートがありましたという映像を流して、今日もありますからねって宣伝をしたとき、ピーコさんが、「阿川佐和子って女がいてね、もう、口から弁当が出てきそうって、汚いの! 汚いの!」とかおっしゃったんだって。あ、そんなに印象に残っちゃったのって、私は思ったんですけど。このことがきっかけで親しくなったような気はしますね。

――汚さがとりもつ縁。

 あと、私がほんとに感謝したのは、『ウメ子』という創作物語を書いたとき、その出版の宣伝期間に、ピーコさんがレギュラーだった昼のワイドショーに招(よ)んでいただいたんです。そしたらピーコさんが懸命になって私の本の宣伝をしてくださったの。「ほんとにいい本だから、みんな読んでね」って感じで。もう、三、二、一って、番組が終わる寸前まで本を持ってなさいって言ってくださって。

――それは有難いですね。

 それから一年ぐらい経って、『ウメ子』が坪田譲治文学賞を受賞したんですね。で、私は感謝の気持ちとして、ピーコさんに授賞パーティへの招待状を送ったんです。まさか来てはくださらないだろうと思っていたら、来てくださったの。そのときに、「お祝いね」って言って、シャネルのアンティークのネックレスをくださったんですね。なんて気遣いのある優しい方なんだと思って、それはビックリしたんですよ。

――すっかり気に入られていたんですね。

 気に入られていたかどうかわかんないんですけど、評価してくださったことが嬉しかったですね。

――阿川さんといえば、『週刊文春』の「阿川佐和子のこの人に会いたい」ですが、もうどのくらいになりますか。

 今年の春から十三年目に入って、数でいうと五百七十人ぐらいですか。

――とすると、往年の読者には懐かしい「イーデス・ハンソン対談」よりも長いんじゃないですか。

 私がホステスをはじめて七年目ぐらいのとき、ハンソンさんにお会いしたことがあったんです。「ハンソンさんは、何年お続けになったんですか」と伺ったら、ちょうど十年だって。で、対談の構成をやってくれている柴口育子さんに「私も十年やったらやめようかなと思ってる」って言ったら、柴口さんがゲラゲラ笑って、「アンタ、七年でクビになるかもしれないのに、図々しすぎない?」って言われて(笑)。「ああ、たしかにそうだねえ」と。十年はまだはるか先だと思ってたのに、十二年になっちゃいました。

――「この人に会いたい」は、第一回目が花田憲子さんで、続いて朝日新聞社の中江利忠社長、横綱の曙、Jリーグチェアマンの川淵三郎氏、ヴァイオリニストの五嶋みどりさんと、まさに多士済々。よくこなしてこられましたね。

 ほんとにねえ。泣く泣くやってきました(笑)。

――人選はどうなさっているんですか。

 新米の頃は編集部が決めた相手を次々とこなしていくだけだったんですけど、ある程度慣れてきてからは、担当編集者と構成のライターと三人で、「誰かいない?」「こういう売り込みがあったけどどうする?」という相談をしょっちゅうしていますね。だから私、最近よく言うんだけど、餃子屋のおかみの気分だって。

――餃子屋?

 餃子をせっせと作って焼いて、お客さんに「はい、一丁」って出すという繰り返し。で、少しストックができたら、ちょっとお茶でも飲んで一息つこうかなと思うでしょ。でももうストックがなくなってるの。あんまり作りすぎても、新鮮な美味しい餃子をお客さんに提供できないから、一カ月分をまとめて作るということはできない。だから、年がら年中餃子を作る。それを十二年間続けてきたような気がします。

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ピーコとサワコ
阿川佐和子 ピーコ・著

定価:本体590円+税 発売日:2011年08月04日

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