- 2013.09.13
- 書評
インドアな私が
なぜマラソン中毒者になったのか
文:小野 裕史 (インフィニティ・ベンチャーズLLP 共同代表パートナー)
『マラソン中毒者(ジャンキー) 北極、南極、砂漠マラソン世界一のビジネスマン』 (小野裕史 著)
ジャンル :
#ノンフィクション
35年間運動ゼロだったデブ男が、ゲーム感覚で始めたダイエットがきっかけで、砂漠250㎞マラソンを7日間の衣食10㎏ほど自ら担いで走り抜き、世界一ランナーとなる。
私の本業は、日本と中国にてインターネットのベンチャー企業30社ほどに投資をする投資家である。マラソンはあくまで趣味で始めたのだが、今では月に3本100㎞マラソンを完走したり、富士山をぐるっと1周山道160㎞を2晩寝ずに走ることが日常になってしまい、今や「走る投資家」とも呼ばれているようだ。今年のゴールデンウィークは、東京から新潟まで520㎞の道のりを6日間かけてランニングだけで走るレースを完走し、ヨメの母から「電車賃、ないのかえ?」と心配されてしまうくらいに、どっぷりとマラソンの世界へとのめり込んでいる。
幼少期から体育の成績は上中下の「下」で、つい最近までは運動とは縁遠くインドア派だった私にランニングを始めさせたのは、趣味で好んでいたゲーム機、任天堂のWii Fitだった。遊びながらダイエットができるのではと、バーチャルにランニングを楽しむうちに、せっかくならとリビングから外に出て、リアルに走ってみたのが最初の一歩。
ランニングというのは「努力するだけ、ちゃんと結果が返ってくる」という、大人の世界ではまず出会えないステキな世界なのだ。もちろん最初は5㎞すらまともに走れなかった私だが、ランを始めて2カ月後にはハーフマラソン、3カ月後にはフルマラソンとハードルを上げていく。
一度もフルマラソンを走ったことがない人にとっては、フルマラソンを走る事自体が想像のつかないチャレンジだろう。ましてや、完走した時の身体中を突き抜けるような達成感と喜びたるや、ゴールテープを切った者にしか味わえない。しかし、人は一度体験してしまった感動は、二度と同じようには感動できない生き物だ。
「もっと激しく心揺さぶる体験はないのか?」
そうして私は、ただ走る楽しさだけでは物足りなくなり、ダイコンのコスプレで100㎞を走ってみたり、ついにはニンジャのコスプレで北極点でフルマラソンや、南極で100㎞マラソンにチャレンジしていくほど、マラソン中毒に冒されていった。
インドアが共通項で結婚してくれた私のヨメも、いまや半年に1日しか家に居ないほどレース遠征に明け暮れる私の変化に対し、「こんなハズじゃなかった」「結婚詐欺だ」と日々激励してくれるようになった。
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