- 2016.12.06
- インタビュー・対談
作家発! 書き下ろし豪華アンソロジーの魅力~人気作家9名が競演。
第二文藝部
第一弾『捨てる』ができるまで~(篠田真由美・永嶋恵美・福田和代・光原百合)
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
女性作家集団「アミの会(仮)」が精力的に活動している。
2015年11月に書き下ろしアンソロジー第一弾『捨てる』(小社刊)、2016年6月に第二弾『毒殺協奏曲』(原書房刊)、そして2017年2月には早くも第三弾『隠す』(小社刊)。さまざまな魅力が詰まった玉手箱のようなアンソロジーはどのように生まれるのか-―このほど専用フェイスブックページを開設、自らPR動画も作成した「アミの会(仮)」の4人に、アンソロジー創作の秘密と魅力を語っていただきました! 座談会出席者は光原百合さん(写真左上)、永嶋恵美さん(同右上)、篠田真由美さん(同左下)、福田和代さん(写真左下)。
日本推理作家協会賞受賞!
福田 『捨てる』では、9人の女性作家がこのテーマでそれぞれに短篇を書きました。短篇って苦手だと自分では思っていたのですが、今回書いてみたらとても楽しかったんです。そもそも、ノンシリーズの短篇って、書く場自体がないんですよね。本になってもなかなか売れないから。
篠田 それは、作家みんなが共有する認識ですね。だからこそ今回、自分達作家から発信するアンソロジー本を作ることになったわけです。やってみたら、とても新鮮でした。
光原 フェイスブックで、どんなテーマにするか皆で決めるときも楽しかったですよね。なるべくひねったテーマに決めて、書くときはそのテーマをさらにひねって……。
福田 同じ「捨てる」というお題で書いてもこんなにバリエーションがある。想像力ってかぶらないんだなと感動しました。
篠田 自分の書くものの個性とテーマをぶつけ合わせて、何を書くか考えますよね。他の人と競争する感じ(笑)。本が出来た時は、答え合わせする気持ちで読みました。
永嶋 私は、アンソロジーに参加すること自体が初めてだったんです。だから、内容がかぶっちゃったらどうしよう、という恐怖でいっぱいで(笑)。絶対に絶対にかぶらないために、ゲームのノベライズを数多くやってきたという自分の特徴を生かすしかない!と思いまして、トランプの話を書きました。
光原 OL三人がババ抜きをして「負けたら罰として秘密をひとつ話す」と決めてゲームを続ける内、だんだんと重い秘密を暴露しあうことになり、最後には驚愕の事実が……この永嶋さんの『ババ抜き』が今年の「日本推理作家協会賞」を受賞しました。「アミの会(仮)」メンバーも大いに沸きましたね。
福田 おめでとうございます! もうほんとにこれ、女のドロドロがゼリー寄せみたいになってて……。
篠田 ミステリーとしてほんとにイケてる短篇。テレビドラマ化して欲しいですね。
永嶋 ありがとうございます。それにしても、『捨てる』に載ってる9篇はほんとにバリエーション豊かですね。ミステリー、ファンタジー、心温まる話やホラー……。福田さんの『捨ててもらっていいですか?』は、おじいちゃんの遺品の中から「拳銃」がみつかるという事件が描かれますが、実は私の周囲でも同じことがありました。警察に届けるかどうかで大騒ぎをしたということがありましたので、とてもリアルでした。
福田 私は、自分はアクション担当だと思っていましたので(笑)、「拳銃」を出すことも考えついたんです。
篠田 スカッと、読後感も爽やかな1篇でしたね。逆に、光原さんの『戻る人形』は、捨てても捨てても戻ってくるお人形さんが非常に怖くて……他3篇も、光原さんのスタイルで紡ぐ「捨てる」物語でした。
光原 私は長いものを書くのが苦手なので、超短篇を4本という形にしました。男女の別れを台詞中心に描いた「バー・スイートメモリーへようこそ」という1篇は、さだまさしさんの「推理小説(ミステリー)」という曲から着想してるんですよ。男と女、果たしてどっちが「捨てた」のか……ほんとに、「捨てる」っていうテーマは絶妙でしたよね。
永嶋 そうそう。かぶるのが怖いと思ってましたけど、実際には大丈夫なんですね。例えば、福田さんと篠田さんはモチーフが「遺品整理」っていうところまでは同じでも、その内容は全く違います。篠田さんの「for get me not」は、お母さんが亡くなって独身の娘が実家の整理に行くお話。押入れの奥までギッシリと物が詰まっている描写がすごくて……。
篠田 「捨てる」というと、それしか浮かびませんでした。その辺は私のリアルな経験なんです。
福田 作中に出てきた「忘れな壺」が印象的でした。あれは篠田さんの創作ですか?
篠田 小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」って読んだことありますか? 実はその中に「忘れな壺」が出てくるんですよ。
福田 え、そうでしたか。「黒死館」は読んだんですが忘れてました(笑)。思い出を仕舞っておく用途の壺……雅で、とても心に残る印象的なアイテム。親の死と遺品整理という、誰もがリアリティと深い思いを感じる一篇ですね。
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