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“破壊と創造”を貫き、人々に喜びを

“破壊と創造”を貫き、人々に喜びを

「オール讀物」編集部

シブサワ・コウ(株式会社コーエーテクモゲームス ゼネラルプロデューサー)

出典 : #オール讀物
ジャンル : #歴史・時代小説 ,#趣味・実用

 株式会社光栄を立ち上げたのは、二十七歳のときで、最初の数年は経営状態が苦しかったんですね。自分の経営者としての才覚に疑問を感じ、経営を学ぶために様々な本を読みました。そのときに出会ったのがドラッカーの『マネジメント』です。

 最も印象に残ったのは「顧客の創造」というフレーズでした。ドラッカーは、企業の目的は儲けることではなく、「顧客を創造すること」だというんです。顧客の潜在意識のなかに需要があるにもかかわらず、商品やサービスになっていないものを創り出すことを目指すべきだと。企業とは、人々に快適さや、喜びを届けるために存在している。利益はその活動を続けるために必要だが、目的ではなく結果だ、とドラッカーは綴っています。

 これを読んで、戦国武将と通ずるものがあるなと感じました。まさに織田信長の生涯がそうでした。「破壊と創造」を繰り返し、古い文化や慣習を壊して、新しい社会や価値観を生み出し、人々を幸せにしようとした。

 余談ですが、城山三郎さんの『雄気堂々』で描かれた渋沢栄一も同様の理念を持っており、明治の時代に立派な人がいたんだと感激しました。シブサワ・コウは、渋沢栄一にちなんだものです。この名に恥じない経営者でいたいと、ゲームソフト会社にできることは何かと常に考えています。魅力的なエンターテインメントを提供し続けることが、人々を幸せにすることに繋がっていると信じて、常に新しいことにチャレンジし続けたいですね。


お勧めの3冊

・『国盗り物語』(全四巻) (司馬遼太郎 著) 新潮文庫

・『三国志』(全五巻) (吉川英治 著) 講談社文庫

・『マネジメント[エッセンシャル版]』 (P・F・ドラッカー 著) ダイヤモンド社

シブサワ・コウ

シブサワ・コウ

1950年生まれ。本格歴史シミュレーションゲームの市場を開拓したプロデューサー。本名の襟川陽一として、コーエーテクモホールディングスの社長を務める

会社メモ:1978年、襟川陽一が家業を継ぎ、コーエーを創業。80年にゲームソフト会社に業種転換、83年、『信長の野望』を発売し、大ヒット。2009年にテクモと経営統合し、現在の社名に

オール讀物 2016年5月号

特別定価:1,000円(税込) 発売日:2016年4月22日

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