2011.08.20 書評

行き詰まったら「易経」に相談してみよう

文: 氷見野 良三 (易経研究家)

『易経入門――孔子がギリシア悲劇を読んだら』 (氷見野良三 著)

――そもそも易経って何ですか?

 中国の古典です。今から二千五百年前に孔子が完成した、といわれています。孔子は、論語でも、相手に応じ、状況に応じて教え方を変えていますが、易経では、もっとはっきり、時代とか、場面とか、その中での自分の位置とかのパターンに応じて、アドバイスを書き分けているんです。

 家庭でも、職場でも、国際関係でもそうですが、同じことをやっても、他のメンバーとの関係次第で、結果は全然違ってきますね。打って出るべき場面もあれば、自重すべき場面もある。

 易経には、関係当事者の個性の組み合わせに応じて、場面ごとに、これからどんな変化がありうるのか、何に気をつけたらいいのか、誰と組んだらいいのか、孔子のアドバイスが書いてあります。パターン別のアドバイス集ですね。

――占いの本じゃないんですか?

 吉とか凶とかいって、それで安心したり、諦めてしまったり、というのではないんです。「厳しい状況だが、打つ手次第ではいい局面に転換できる」とか、「今の行き詰まった状況を、成長の機会として生かすためには、こうしろ」とか書いてある。結構しぶとくて、往生際が悪いくらいに打開策を工夫し続けるんです。

 直球勝負ばかりではなくて、いろんなプレーヤーの間の力学・全体のバランスを見ながら、処方を考えるのも特徴です。誰か悪い人を見つけて、治す、取り除く、といった西洋医学的な考え方とは違います。君子も小人も、立派な人も駄目な人も、状況次第で役にも立てば害もなす。そう考えて、チーム全体が健康になるように工夫する、そういう漢方みたいなアプローチです。

――伊藤忠商事の社長をされた丹羽宇一郎さんは、「人生、人智に及ばぬこともある――その解は『易経』にあり」と言っておられますね。

 丹羽大使の言葉の意味を本当に感じとるためには、易経を実地に使ってみる必要があります。本書では、「人生、人智に及ばぬ」運命の例として、ちょっと突飛ですが、ギリシア悲劇の物語を取り上げて、悲劇の登場人物の一人ひとりに孔子のアドバイスを聞かせてみました。

易経入門
氷見野 良三・著

定価:882円(税込) 発売日:2011年08月19日

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