2016.04.22 別冊文藝春秋

土砂崩れで孤立した雪国の田舎を舞台に、死の恐怖に直面する「父と娘の愛情」を描く

文: 櫛木 理宇

櫛木理宇「AX(アックス)」

 いままでに何作か、故郷を舞台にして書いてきました。

 わたしは雪国の片田舎の生まれで、冬ともなれば一日に三、四回雪かきをしなければならないこともざらです。

 新人賞をいただいた作品はまさに「雪国の閉塞感」をテーマにした作品で、「ああ、生まれてはじめて雪国生まれが役に立った」と思ったことを覚えています。

 また『避雷針の夏』という作品は同県の母の故郷をモデルにして書きました。

 田舎者を誇張して戯画的に書いてある、という感想を多くいただきましたが、モデルの地で生まれ育った母には「そのまんまだ」とたいへん好評でありました、とここでこっそり書かせていただきます。

 今回連載させていただく『AX(アックス)』も、同じく故郷の田舎が舞台です。

 季節は不快指数の高い梅雨どきにし、土砂崩れによる孤立という閉塞的な状況をつくり、時代は昭和五十年代の学生運動の余波覚めやらぬ頃に設定し――と、わたし好みの要素をこれでもかと盛りこみました。

 とはいえ今回のメインテーマは閉塞感ではなく、「父と娘の愛情」です。

 閉ざされた状況下の息苦しさ、爆発にいずれ至る長い鬱屈を書きながらも、このメインテーマを背骨に一本貫いておきたいと思います。

 最後までお付き合いいただければ、幸いです。

「別冊文藝春秋 電子版7号」より連載開始

別冊文藝春秋 電子版7号(通巻323号/2016年5月号)

定価:※各書店サイトで確認してください
発売日:2016年04月20日

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