2013.04.04 書評

日本にとっても対岸の火事ではない

文: 広岡 裕児 (ジャーナリスト)

『エコノミストには絶対分からないEU危機』 (広岡裕児 著)

 EUの経済危機については、連日のように報道され解説され、出版物も無数に出た。だが、まだ、1番肝心なことが語られていない。

 危機の発端は、ギリシャによる国家債務の粉飾の発覚だった。しかし、ギリシャの統計があてにならず、脱税も多いことは市場関係者の常識だった。それにギリシャの粉飾は初めてではない。前回はまったく無視されていた。また、もし国家債務の大きさが問題なのであれば、日本を筆頭にもっと大きな国はたくさんある。

 ギリシャ政府のゴマカシや債務の大きさだけでは危機は起きない。

 危機の当初、ギリシャ国債の下落と国債の「不払い保険」ともいうべきCDS価格の上昇があった。これは、投資銀行やヘッジファンドなど投機筋が国債の空売りとCDSの吊り上げを組み合わせて仕組んだものだといわれている。

 10年12月に公刊されたフランス国会調査委員会報告は、ギリシャ危機は大きな国際的危機の一部であり、金融投機の逸脱の代表的な例である、と述べ、危機勃発の時期にゴールドマン・サックスが顧客(おもにヘッジファンド)にCDSを買うように勧め、国債の信用低下を引き起こすための偽の噂を流したと疑っている。

投機筋に攻撃されたユーロ

 投機筋にとって、統一通貨ユーロの不完全さは絶好の材料だった。また、ユーロ崩壊は彼らの夢でもあった。各国ごとに通貨がバラバラの方が儲ける機会も多く規模も小さくなり攻撃しやすい。それにユーロは成功するはずがない(してはならない?)と考える経済学者も多かったからその欠点をあげつらうには事欠かない。

 しかしながらユーロは、単純なレートを固定した通貨ではなかった。また、EUもTPPのように単に経済的理由から成立したものではなかった。紆余曲折ありながらも対策が進んで欠点も徐々に改善されつつある。

【次ページ】従来の経済理論が通用しない。

エコノミストには絶対分からないEU危機

広岡裕児・著

定価:788円(税込) 発売日:2013年03月19日

詳しい内容はこちら