2009.04.20 インタビュー・対談

生命はどこからやって来るのか

聞き手: 「本の話」編集部

『ドンナ・マサヨの悪魔』 (村田喜代子 著)

生命はどこからやって来るのか

──『ドンナ・マサヨの悪魔』は、出産という女性にとっての一大イベントを舞台に、生命の不思議を主題にすえた壮大なスケールの物語ですが、なぜ出産について書きたいと思われたのですか。

村田  直接のきっかけとしては、娘の妊娠、出産という出来事があったからです。そこで驚いたのですが、私たち世代が出産したときと、まったく事情が様変わりしていたんですね。

  まず祖父母、それも祖父の協力というのが挙げられます。いま出産適齢期にあたっているのはちょうど団塊ジュニア世代なんですが、その親にあたる団塊世代が子供夫婦の出産に協力しようと、積極的に乗り出しているわけです。わざわざ自分たちの家を売って、子供夫婦の家の近くに引っ越すような例もある。

  それも女親より男親のほうが熱心なんです。彼らは若い頃仕事一筋で、自分の子供の出生時にはなにもしなかった。ところが定年退職して家でやることもなくぶらぶらしているところに、孫の誕生に出会ってとても感動するんですね。生まれた後も親夫婦ではなくて祖父母が面倒をみる、それもおじいさんが頑張るというトレンドに衝撃をうけました。老人になって男性ホルモンが減ったことで、男が女性化したのではないかと私は疑っていますが。

  出産そのものに対する考え方も大きく変わっています。いまや体外受精も珍しくなく、科学技術の進歩によって子供を授かることができるようになった半面、出産現場では自然出産というのが大きな流れになりつつあります。

──具体的にはどのようなものなのですか。

村田  なぜ自然に産むのがいいのかというと、「出生時暴力」を防ごうということなんですね。赤ん坊が生まれてくるとき、鉗子(かんし)で挟んで引っぱられたり突然暗いところから出されて強烈な光を浴びたりします。人間はそのとき受けた痛みや眩(まぶし)さを覚えているそうです。そこでそうした出生時の苦痛の体験をなくそうという動きが出てきて、自然出産する人が増えているんですね。暗い産室で子供を分娩したり、へその緒を切らないで一時間くらい母親のお腹のうえに載せておいたりする。こうすると親子の心臓と心臓が響きあって生まれたばかりの赤ちゃんが落ち着くそうです。

  いま大病院をやめて小さな産院を開業するお医者さんもいるそうです。そういう医院も面白いですよ。玄米を食べなさいとか、牛乳は飲まないとか。人間の体は人間の食べたものでできているわけです。赤ん坊の体は、妊娠中に母親が食べたものでつくられる。だから食べるものには特に気をつかいます。牛乳というのは異種の乳だから、授乳時にはあまり飲ませない。

   音楽を聴いたり絵本を読んだりするのも、母親の目や耳を通じて胎児の細胞が記憶するようにと思ってするんですね。これがいまの自然出産の最先端。うちの娘も一生懸命やっていました。高学歴の女性ほどはまるようですね。研究熱心でいろいろ情報収集していますから。

ドンナ・マサヨの悪魔
村田 喜代子・著

定価:1600円(税込)

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