単行本

人質の経済学

1,925 (税込)
発売日2016年12月28日
ジャンルノンフィクション
商品情報
書名(カナ) ヒトジチノケイザイガク
ページ数 312ページ
判型・造本・装丁 四六判 上製 上製カバー装
初版奥付日 2016年12月30日
ISBN 978-4-16-390580-8
Cコード 0098

実際に人質救出交渉にあたった交渉人らが証言

◆トランプ後の世界に必読の一冊◆

「恐ろしい本。
人間が、単なる商品として取引される実態を克明に描く」
解説:池上彰(ジャーナリスト・名城大学教授)

交渉人、誘拐専門の警備会社、囚われた人質、難民らによって明らかになる事実。

・一番金払いが良いのはイタリア政府。
それゆえここ15年ほどの間に大量のイタリア人が誘拐されている

・助けたければ誘拐直後の48時間以内に交渉せよ

・武力による救出の3回に1回は失敗に終わり、人質または救出部隊に死者が出る

・10年前、200万ドル払えばイラクで人質は解放された。
今日ではシリアでの誘拐で1000万ドル以上支払う

・誘拐された外国人は出身国によって、助かる人質と助からない人質に分けられる

・誘拐組織は難民たちの密入国斡旋に手を拡げ、
毎週数万人をヨーロッパの海岸に運び、毎月一億ドル近い利益を上げている


【目次】

■はじめに 誘拐がジハーディスト組織を育てた
二〇〇四年イラクで誘拐された欧米人は二〇〇万ドルの身代金で解放された。
しかし今日ではシリアでの誘拐で一〇〇〇万ドル以上を払うこともある。本書
は、誘拐によりいかにジハーディスト組織が成立し、伸長していったかを描く

■序章 スウェーデンの偽イラク人
二〇〇六年スウェーデンの大学街で、私は「イラク」人に話しかけられた。そ
のイントネーションから彼が「イラク」からの難民ではないこと、北アフリカ
のどこかから来たことはすぐわかった。その男は、誘拐をビジネスにしていた

■第1章 すべての始まり9・11 愛国者法
愛国者法の成立で、金融機関はドル取引を米国政府に報告することになった。
コロンビアの麻薬組織は、ドル決済にかわりユーロ決済を選択。イタリアの犯
罪組織と接触し、ギニアビサウからサハラ砂漠を越え欧州へ入るルートを開拓

■第2章 誘拐は金になる
麻薬密輸ルートはやがて、生身の人間を運ぶようになる。北アフリカでの誘拐
でも、二〇〇四年からイラクで始まった誘拐でも、政府が金を払った。そして
イタリアと日本の政府が支払った身代金は将来の誘拐を助長する結果を生んだ

■第3章 人間密輸へ
サハラ縦断ルートでは誘拐の多発で観光客が途絶えた。そこでジハーディスト
組織が目をつけたのが人間の密輸だ。リビアの海岸からイタリアへボートで渡
るルートが一人一~二〇〇〇ドル。誘拐よりも儲けが多く、容易なビジネスだ

■第4章 海賊に投資する人々
一年で一〇〇〇人を超す誘拐を繰り返すソマリア海賊は、投資する人々がいて
初めて船を出せる。誘拐が成功すれば、出資者に利益の七五%が還元される。
海賊の取り分は残りの二五%だけだ。ソマリアの経済は海賊でまわっている

■第5章 密入国斡旋へ
武装した警備員を用意する、軍艦のエスコートを求めるという対策により、ソ
マリアの海賊事業の成功率が下がった。彼らの次なる商機は移民のイエメンへ
の密入国斡旋。そこには悪質な斡旋業者の餌食になった移民たちの姿があった

■第6章 反政府組織という幻想
アサド政権は裕福な市民を拉致し、反体制側は外国人を狙う。反政府組織が「ア
ラブの春」が生んだ「自由のための戦士」というのはメディアの思い込みだ。
彼らに必要なのは「食料と武器を買う金」であり、そのための身代金なのだ

■第7章 ある誘拐交渉人の独白
ヨーロッパの政府は地元経済を変えてしまうほどの大金を払う。マリ北部の誘
拐事件で人道支援活動家に数百万ユーロが支払われてから、そこではユーロが
流通するようになった。誘拐はありがたい商売だと思われても不思議はない

■第8章 身代金の決定メカニズム
政府は人質に優先順位を付けている。最も多額の身代金を払っているのはイタ
リアで、それゆえここ一五年で大量のイタリア人が標的にされてきた。イタリ
ア政府は二重国籍の人質をも救うが、公には身代金の支払いを秘密にしている

■第9章 助けたければ早く交渉しろ
誘拐犯は長くても数週間でケリをつけたがる。すばやく交渉すれば数千ドルの
身代金で救出できるのだ。しかしタイミングを逃せば、人質は規模の大きな組
織に売られる。若きケイラ・ミュラーの悲劇を生んだのも数日の出遅れだった

■第10章 イスラム国での危険な自分探し
フォトジャーナリストを夢見たデンマークのオトセンはスパイとみなされ拷
問を受けた。移民の子どもとしてベルギーに馴染めないイェユンは理想郷を求
めたシリアで自由を失う。命さえ奪われかねない罠に欧米の若者が嵌っていく

■第11章 人質は本当にヒーローなのか?
映画の主人公に憧れて脱走し、囚われた米兵バーグダール。無思慮な行動でイ
タリアの納税者に一三〇〇万ユーロを払わせたラメリとマルズロ。政府は彼ら
を英雄視し、利用する。一方でその身代金は密入国斡旋ビジネスの原資となる

■第12章 メディアを黙らせろ
記事一本で二〇〇ドルしか支払わない大手メディア。フリーランサーたちはラ
イバルに勝つためより多くのリスクを選択する。フセインのメディア弾圧の手
法を真似るイスラム国は彼らを捕獲し、斬首することで報道の息の根を止める

■第13章 助かる人質、助からない人質
イスラム国は、人質を身代金目的と外交戦略目的の二つに分類する。スペイン
人を始めとする人質一二名の解放で一億ユーロもの大金を得た。一方、後藤健
二と湯川遥菜の二人の解放交渉を公にし、日本人に恐怖と不安を植えつけた

■第14章 あるシリア難民の告白
シリアから逃れたハッサン。洞窟で一〇日間を過ごし、小さなボートに一五〇
人乗り。タンカーに乗り移り、イタリアへ。陸路でスウェーデンを目指した。
斡旋業者に支払ったのは五〇〇〇ユーロ。それでも在留許可は下りなかった

■第15章 難民というビジネスチャンス
ノルウェーでは難民に家と食事を提供すれば一晩三一~七五ドルが政府から
支払われる。老朽化した施設を安く買い取り、難民に提供するビジネスモデルが
ヨーロッパ中に広がる。一方で難民の大量流入は差し迫った政治課題でもある

■終章 欧州崩壊のパラドクス
英国のEU離脱は、欧州に押し寄せる難民に、英国人が恐れをなしたことが原
因だ。極右勢力の伸長、移民排斥、国境管理の強化は、誘拐から発展した人間
密輸に携わるものたちを潤わせるだけだ。そしてその金はテロ組織へと流れる

■解説 池上彰(ジャーナリスト・名城大学教授)
「トランプ後の世界に必読の一冊」

担当編集者より

著者のナポリオーニ氏はマネーロンダリングとテロ組織のファイナンスに関する研究の第一人者。ISが本格的な国家を建設する可能性に早くから注目し、2015年に『イスラム国 テロリストが国家をつくる時』がベストセラーになりました。今回彼女がテーマに選んだのは「人質ビジネス」。紛争地で誘拐され、人質にされる援助団体の人、ジャーナリスト。そこには誘拐を大いなる〝ビジネスチャンス〟と捉える過激派テロリストたちがいます。誘拐交渉人、人質、政府高官たちに調査して「テロリズムの経済」を浮かび上がらせます。

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