アナザーフェイス×警視庁追跡捜査係
西川服役中の男が、ある強盗殺人事件の犯人を知っていると情報提供してきた事件があって……。(※4)
沖田俺は、あれに関しては悪い想い出しかないなあ。
西川骨折して、まともに動けなかったからだろう。
沖田ああ……後のリハビリも大変だったんだよ。
西川無理に退院するからだ。もう年なんだからさ。
沖田煩いな。
西川何よりもまず、人を怒らせないことですね。特に内輪の人間を怒らせたら、面倒なことになりますから。現在の担当者、過去の担当者、いろいろな人に話を聴かなければならないのですが、彼らを怒らせたら、まず仕事にならない。同じ刑事として、『事件を解決したい』という目標は同じなんだと納得してもらって、いかに気分よく協力してもらえるかがポイントですね。
西川部署が違っても、基本的にやることは同じなんですよ。警視庁の中──いや、全国どこへ行っても、刑事の仕事はそんなに変わりはないんです。そこを踏み外さなければ、だいたい上手くいきます。
沖田ま、俺もだいたい同じ方針だな。
西川何言ってるんだ。お前は人を怒らせてばかりじゃないか。
沖田俺の周りの人間は、たまたま気が短い奴ばかりなんだよ。
大友僕の場合は特殊で、スポット参戦のような形で捜査に加わるせいもありますけど、奇妙な事件が多いですね。
大友そうですね……これはあまりいい想い出じゃないんですが、僕が学生時代に所属していた劇団を舞台にした事件がありました。(※5)
沖田あれだろう? 何だか本当の芝居みたいな事件だったんだよな?
大友裏で糸を引いていたのが脚本家だったので、確かにそういう感じはありました。謎は解けたんですけど……僕としては、非常に後味の悪い事件でした。やはり、個人的な問題が絡むと、冷静になれませんね。
※4 『標的の男』参照。墨田区で発生した強盗殺人事件。真犯人に心当たりがある──別事件で服役中の男の告白をきっかけに、捜査が新たな展開を見せた一件。
※5 『第四の壁』(文春文庫)参照。大友がかつて所属した劇団の記念公演で、主宰が刺殺された事件。昔の仲間を容疑者として取り調べする大友の苦闘が語られている。