アナザーフェイス×警視庁追跡捜査係

それでは座談会を始めたいと思います。今日のお題は「刑事の絆」。刑事を続けていれば、先輩後輩、同僚と様々な絆ができますが、それについて、たっぷり語っていただきましょう。

沖田テキパキやろうな。俺、本当に忙しいんで。

西川今日は別に、用事はなかったんじゃないか? せっかく美味そうな中華料理屋に集まったんだし、ゆっくりやろうよ。

沖田いや、追跡捜査係は、捜査一課の中で一番忙しいんだから。だいたい、こんな気取った高級中華は、俺の性に合わないんだ。ラーメン屋で十分だよ。

西川何でそんなに忙しいふりをするのかね。

沖田実際、忙しいんだよ。

大友まあまあ、お二人とも。お忙しいのはよく分かっていますので。取り敢えず、前菜を取り分けていいですか?何か食べられないものはありますか?

沖田俺は何でもウエルカムだよ……それより、すぐに話をまとめにかかるのは、お前の悪い癖だぞ。討論すべき時は、徹底して討論しないと。

すみません、今日は討論というわけではないんですが。

沖田違うの?

あくまで座談会ですので。しかも大先輩の法月さんを送るための小冊子用です。穏便に、かつ胸を打つような話が出てくればと思います。まず、法月さんとの想い出話をお願いできますか?

沖田俺、捜査一課で駆け出しの時に、一緒に仕事したよ。同じ班だったんで、いろいろ教えてもらった。あの人、面倒見がいいんだよな。しょっちゅう飯も奢ってもらったし。だけど、よく後輩をからかうんだよなあ。俺も散々馬鹿にされた。

西川でも、悪意はないだろう。

沖田俺は悪意も感じたけど。

西川それは、お前が実際にどうしようもない刑事だったからじゃないか?

沖田うるさいな……それよりお前はどうなんだよ。

西川高城さん※1の娘さんの事件の時に、法月さんから話を聞いてた。

沖田何だ、それ。

西川俺たち、あの事件の再捜査を担当してただろう?
法月さんは高城さんのことをいろいろ気にしてたけど、当時は直接手を貸せる立場じゃなかったから……公式にじゃないけど、裏から相談されてたんだ。捜査に関するアドバイスももらってた。

沖田俺は何も聞いてないけど。

西川むくれるなよ。信頼されてないからだろう。自己責任だ。

沖田まさか……俺と法月さんの絆はそんな軽いもんじゃないぜ。テツはどうなんだ?

※1 高城賢吾 現失踪人捜査課三方面分室室長。詳細は『献心 警視庁失踪課・高城賢吾』(中公文庫)を参照。失踪した高城の娘が白骨死体となって発見された事件。高城は十数年を経て得られた新しい証言を頼りに、娘の死の真相に迫る。

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