阿部智里「八咫烏シリーズ」

祝・デビュー10周年!&『烏の緑羽』刊行
阿部智里さんインタビュー

群馬県前橋市内にて(撮影:深野未季)
群馬県前橋市内にて(撮影:深野未季)

――八咫烏シリーズ第一作『烏に単は似合わない』を上梓されたのは2012年。ついにデビュー10周年を迎えましたね。

本当に運が良く、周囲の方や読者の皆様に支えられての10年でした。「ひたすら頑張るしかないな」と決意を新たにしているところです。

――今年10月には『楽園の烏』の文庫版が発売になり、文庫もいよいよ第二部に突入しましたね。

シリーズを重ねて登場人物が増えてくると、読者さんの思い入れも強くなってきますよね。でも、第二部は「新しい物語」として始める必要があったので、一度それを断ち切る必要がありました。『楽園の烏』をまだ読んでいない方は「これは一体何なんだ!?」という気持ちで読んでいただけたら嬉しいです。

――シリーズ最新刊『烏の緑羽』は一体どんな話になるのでしょうか? 八咫烏たちが主役ではあるけれど、今までとは少し趣が異なるとお聞きしています。

今回は、シリーズ序盤から登場していたけれど中心に描いてこなかった奈月彦の兄・長束や、同じく初期から出ているのに行動の動機が分からない長束の近衛・路近――いわゆる「長束陣営」を中心においています。実は、彼らのエピソードはかなり前から出来ていて、短篇の外伝として書くつもりでしたが、思っていたより本編に食い込んだ内容になったので、いっそのこと第二部の3巻目として書いてみよう、というのが本作の経緯です。
ずっとシリーズを追いかけてくださっている皆さんは、『楽園の烏』『追憶の烏』で誰を信じて良いのか、分からない状態になっていると思います。クライマックスに差し掛かる前に、この物語がどの方向に向かおうとしているのかを確認できるような、ひと呼吸おいた作品になれば幸いです。

――『烏の緑羽』を読むうえで、読者の皆さんにメッセージがございましたらお願いします。

読者さんの好きなように読んでいただきたいのですが、『烏の緑羽』を読む前にどれか復習しておくとしたら……という意味で1冊選ぶとするならば、『空棺の烏』をおすすめしたいです。

――まさかここで第一部の4巻目が出るとは……!

(2022年夏インタビュー)