1999年、台北~高雄間の台湾高速鉄道を日本の新幹線が走ることになった。

入社4年目の商社員、多田春香は現地への出向が決まった。春香には大学時代に初めて台湾を訪れた6年前の夏、エリックという英語名の台湾人青年とたった一日だけすごし、その後連絡がとれなくなってしまった彼との運命のような思い出があった。

台湾と日本の仕事のやり方の違いに翻弄される日本人商社員・安西、車輛工場の建設をグアバ畑の中から眺めていた台湾人学生・陳威志、台湾で生まれ育ち終戦後に日本に帰ってきた日本人老人・葉山勝一郎、そして日本に留学し建築士として日本で働く台湾人青年・劉人豪

それぞれ別々に進んでいた物語が台湾新幹線をきっかけに収斂されていく。1999年から2007年、台湾新幹線の着工から開業するまでの大きなプロジェクトと、日本と台湾の間に育まれた個人の絆を、台湾の季節感や匂いとともに色鮮やかに描いた、大きな感動を呼ぶ意欲作。

台湾新幹線(台湾高速鉄道/Taiwan High Speed Rail)は、2007年1月開業、台湾の台北と高雄とを345kmを最高速度300km/h、それまで240分を要した区間を100分で結ぶ高速鉄道。日本の新幹線の車両と技術を海外に輸出・現地導入した初のケース。