高橋弘希・著『送り火』
お知らせ
- 2020.08.05
- <お知らせ>2020年8月5日に文庫版が発売されます
- 2018.07.24
- <イベント>祝!『送り火』芥川賞受賞記念 高橋弘希さんサイン会 ※終了しました
- 2018.07.23
- 特設サイトが公開されました
作品紹介
油断しているとすさまじい力で裏切られる。純粋な眼で世界を見つめることのできる作家だ。──小川洋子
予定調和の通用しない世界の理不尽な暴力には静かに躍動するコトバで対抗するしかない。──島田雅彦
第159回芥川賞受賞作!
春休み、東京から山間の町に引っ越した中学3年生の少年・歩。
新しい中学校は、クラスの人数も少なく、来年には統合されてしまうのだ。
クラスの中心にいる晃は、花札を使って物事を決め、いつも負けてみんなのコーラを買ってくるのは稔の役割だ。転校を繰り返した歩は、この土地でも、場所に馴染み、学級に溶け込み、小さな集団に属することができた、と信じていた。
夏休み、歩は家族でねぶた祭りを見に行った。晃からは、河へ火を流す地元の習わしにも誘われる。
「河へ火を流す、急流の中を、集落の若衆が三艘の葦船を引いていく。葦船の帆柱には、火が灯されている」
しかし、晃との約束の場所にいたのは、数人のクラスメートと、見知らぬ作業着の男だった。やがて始まる、上級生からの伝統といういじめの遊戯。
歩にはもう、目の前の光景が暴力にも見えない。黄色い眩暈の中で、ただよく分からない人間たちが蠢き、よく分からない遊戯に熱狂し、辺りが血液で汚れていく。
豊かな自然の中で、すくすくと成長していくはずだった
少年たちは、暴力の果てに何を見たのか――
「圧倒的な文章力がある」「完成度の高い作品」と高く評価された中篇小説。