2016.08.24 別冊文藝春秋

迷宮入りを阻む最後の砦「犯罪資料館」を舞台に、謎多き美女と元捜査一課の巡査部長が難事件に挑む!

文: 大山 誠一郎

大山誠一郎「赤い博物館II 夕暮れの屋上で」

 ロンドン警視庁には、犯罪博物館、通称・黒い博物館(ブラック・ミュージアム)と呼ばれる一室がある。著名な刑事事件の証拠品や遺留品を、警察官の教育用に展示している部屋だ。これに倣って、警視庁付属犯罪資料館、通称・赤い博物館というものを考えた。警視庁管内で起きたすべての刑事事件の証拠品や遺留品、捜査資料が収められるという施設だ。

 そこで殺人事件を起こしてみたいと十年以上前から考えていたのだが、最終的に、そこの館長が未解決事件を解くという話に落ち着き、昨年(二〇一五年)、『赤い博物館』という連作短編集として刊行していただいた。

 書いてみると、この設定はとても便利である。現代において名探偵に殺人事件を捜査させるのは難しい。アマチュア探偵や私立探偵だと、警察官の守秘義務の壁を越えて捜査情報を入手するのにいろいろと口実が要るし、捜査一課の刑事にすると、巨大な捜査本部の一員として細分化された訊き込みをするだけなので全体像が見渡せない。かといって捜査本部の長にすると、話に動きがなくなってしまう。その点、犯罪資料館の館長ならば、館内に捜査情報は揃っているし、捜査本部の一員ではないので自由に行動できる。

 そして、未解決事件の再捜査ならば、リアルタイムの事件にはない、時の流れという要素を取り入れることもできる。もっと書きたいと思っていたところ、ありがたいことに続編の依頼をいただいた。持てる力のありったけを注ぎ込むつもりなので、ご一読いただければ幸いである。

「別冊文藝春秋 電子版9号」より連載開始

別冊文藝春秋 電子版9号(通巻325号/2016年9月号)

定価:※各書店サイトで確認してください
発売日:2016年08月20日

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