大切なデートに気合を入れて着ていく洋服は「勝負服」、勝利を目指し体調を万全に整えるために食べるごはんは「勝負めし」……。
ここ一番というときの「勝負◯◯」はいろいろありますが、私が注目したのは、東大合格生が入試当日に持っていた究極のノート、「勝負ノート」です。
この度、出版することになりました『東大合格生の秘密の「勝負ノート」』について少しだけ、その内容をご紹介したいと思います。
この本は、2008年秋に出しました拙著『東大合格生のノートはかならず美しい』の続編になります。ここから6年、私は、学校などから講演会の講師として呼ばれることが増えました。そんな中、ノート指導に骨を折る親御さんや先生たち、ノートを一生懸命に書いても成績が上がらず悩んでいる生徒さんたちとたくさん出会いました。また、ここ2、3年は、「自学自習ができない子が増えた」という話をよく聞くようになりました。
自学自習する力、目標に向けて自ら何をすべきかを考えながら勉強していく力を持っている人たち……と言えば、東大合格生です。彼らは、常に目的意識を持ちノートを書くことで自ら学ぶ力を身につけています。そこでもう一度、東大合格生と東大ノートに向き合ってみようと思い、取材を始めました。
東大合格生たちが受験勉強中に書いたたくさんのノートを見せてもらっているうちに、彼らが共通して持っている“あるノート”の存在に気づきました。それが、入試当日に持参して試験開始の直前まで見直し、ここ一番の勝負どころで力を発揮したノート、「勝負ノート」でした。
この「勝負ノート」は、大きくは2つのノートを起源として生まれています。
ひとつは、授業中に黒板の内容や先生の解説を書き留めた「授業ノート」です。この「授業ノート」に、模擬テストや過去問演習などで間違えた問題や授業以外で得た知識などをどんどん書き込んでいき、一元化することで、受験に必要な知識を網羅し、かつ体系的にまとめたノートをつくり上げます。こちらは、自分にとって頭に入りやすい形で知識が整理してある自作の参考書のような「勝負ノート」になります。
もうひとつは、間違えた問題を見直すためにつくる「問題復習ノート」です。模擬テストや過去問演習で間違えた問題とその解法、解答を書き、また間違えた理由も書き込んでいきます。これは、自分の弱点だけを集めた、これさえ克服すればいいという問題だけをまとめた自作の問題集のような「勝負ノート」になります。
この「勝負ノート」の起源となる2種類のノートに共通することは、「復習」です。東大合格生は、東大に合格するため、合格最低点を一点でも多く超えるために、自ら弱点を洗い出し、それを徹底して克服していきます。その過程の中で「勝負ノート」が生まれているのです。
受験勉強の間、人それぞれではあるのですが、短い人だと3か月、長い人だと2年以上をかけて「勝負ノート」をつくり、そして、東大入試直前まで、そこに書いてある内容のすべてが頭に入るまで何度も何度も見直していきます。
ある東大生は、「勝負ノート」のことをこう言っています。
「このノートは、私にとってお守りのような存在でした。でも、神頼みではない。このノートに私の弱点が書かれていて、ちゃんと暗記するまで繰り返しやってきた。経験に基づく安心感でした」
この「勝負ノート」こそが、東大合格生の弱点克服に力を発揮し、成績を東大合格レベルにまでアップさせ、さらには、精神面でも拠りどころになった、知識と精神の両面から彼らをサポートしたノートだったのです。
また、自らの定めた目標に向けて、自分のやり方で弱点を克服していくという、自学自習が生み出したノートでもあります。
『東大合格生の秘密の「勝負ノート」』では、東大合格生たちの勉強法や思考法を探りながら、彼らにとっての最強の参考書であり、問題集である「勝負ノート」がどのように生まれたのか、また、そのつくり方を詳しく解説しています。どうして東大に合格できたのか。その理由が見えてくる本になっていると思います。