父・淳悟と娘・花は貪るように互いを求め合う――。 直木賞受賞作の問題作『私の男』がついに映画化。主演女優・二階堂ふみと原作者・桜庭一樹が語り合った。
ずっと好きでした
桜庭 お会いするのは、試写会以来ですよね?
二階堂 お久しぶりです。
桜庭 『私の男』ですが、原作は主人公の女の子の一人称の語りが強くて、この娘に寄り添うから感情移入してしまうっていう書き方をしたんです。映画のほうは、ヨーロッパの映画にあるような、感情移入させるというよりは、こういう人たちがいる、こういう現象があるというふうに撮られるんだろうな、と思っていたので、試写で観て、ストーリーとテーマは原作と一緒だけどアプローチがすごく違うな、と感じました。
二階堂 『私の男』を初めて読んだ時のことは、結構強烈に覚えています。桜庭先生の本は、最初に中学校の図書館にあった『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』を好きになって、それから、『GOSICK』とかを読みました。『私の男』は、発売されてすぐにニュースになったので「あ、読もう」と思って単行本を買ったんですよ。初めて脚本を読んだ時は、どんな撮影現場になるのか、全く想像できませんでした。撮影が終わった時は、どんな完成になるのか予想できなかったけれど、絶対いいものになるはずだという確信はありました。でも、とても思い入れの強い作品だったので、実際に観るまでは緊張していましたね。元々、原作がすごく好きだったから、独特の世界観を絶対壊したくなかったですし、必ず原作とリンクしたものを映画に持たせたいと思っていました。桜庭先生の文章から生まれてくる感覚的なものを映画でも出せたらいいなって。だから、熊切和嘉監督の作品『私の男』では、被写体として肉体で表現できることを最大限にやりたいと思っていたのですが、それには成功したような気がします。
桜庭 中学生から二十代後半までを演じ分けるのは大変なことですよね。
二階堂 意外に大丈夫でした。見た目に関しては、中学生に見えるように、二十五歳に見えるように、できる限りのことをしました。中身に関しては、浅野忠信さんの存在が大きかったと思います。花である私が二十五歳の設定になれば、浅野さんが演じる淳悟もその分だけ老いるので、私はそれを現場で感じながら演じていたのではないかな、と思います。
桜庭 中学生から始めて、だんだん年齢が上がっていくように撮影するんですか? それとも、ランダムに?
二階堂 最初に撮ったのは、冬編の高校生時代。そういう時期から撮影して、流氷のシーンがあって、その後に春編の中学生時代がありました。
桜庭 時間があいていたんですね。
二階堂 二ヵ月あいて、その間に私の初舞台があったんです。
桜庭 『八犬伝』をやっていらっしゃったんですよね。
二階堂 ええ、桜庭先生の『伏 贋作・里見八犬伝』も読みました。
桜庭 ありがとうございます(笑)。
二階堂 二ヵ月あいたことで、全然違うモチベーションで春編に挑むことができたんです。
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