2014.06.27 インタビュー・対談

公開対談 辻村深月×円城 塔
小説で“事件”を描くとは

第150回記念芥川賞&直木賞FESTIVAL(別册文藝春秋 2014年7月号より)

公開対談 辻村深月×円城 塔<br />小説で“事件”を描くとは

第150回を迎えた芥川賞・直木賞を記念して行われたフェスティバルでスペシャル対談が実現! 小説家はいかにして「事件」と向き合い「事件」を描くのか? フィクションの新たな魅力を発見する 辻村深月×円城 塔 白熱討論

選考会の日に届いたメール

――まず、それぞれのご受賞当時の思い出からお聞かせいただけたらと思います。

円城 僕が受賞したのは、3回目の候補の時だったんです。芥川賞って、候補になるとすごく疲れるんですよ。それで選考会のちょっと前に発熱して、倒れてました(笑)。当日は、とくに待ち会もしないで、ホテルで寝てましたね。体調が悪いので少し横になったら本格的に寝ちゃって、選考会が始まってから「ああっ」と起きたほどで。

辻村 受賞が決まった後の記者会見は大丈夫だったんですか?

円城 熱は下がってたけど、だるかった。だから、かなりナチュラルな感じで「起きてそのまま来ました」みたいな会見になりました。辻村さんはどうでしたか?

辻村 私も円城さんと同じく3回目の候補で受賞しました。円城さんとは1度、同じ回の候補になったことがあって、円城さんが『これはペンです』で芥川賞候補、私が『オーダーメイド殺人クラブ』で直木賞候補になった時です。……これ、友人の作家と、直木賞候補どうしになっちゃうと、けっこう嫌なものなんですよ。

 私が一番最初に候補になった時、友人の道尾秀介さんも同じ回の直木賞候補で、会うと「とれたらいいね」って言うんだけど、どちらか一方が受賞したら嫌だなっていう、そこはかとない緊張感がお互いの間にあるんですよね。結局、その回はお互い受賞ならずで、2人で合同の残念会をして、それはすごく幸せな経験だったんですけど。

 それに比べると、円城さんと一緒に候補に選ばれた時は、回は同じだけど芥川と直木で別だから、すごく気が楽でした。一緒に受賞の記者会見をできたらとてもうれしいけど、円城さんに先に取っていただくならそれはそれで勇気づけられるし、心の底から「頑張って」と思える状態で。その回は2人とも残念な結果だったんですが、ちょうど私が妊娠中で、じつは選考会の日が出産予定日の3日前だったんですよね。

円城 ああ、そうでした。

辻村 私は実家で結果を待ってたんですけど、その時に円城さんがくれたメールが「これで受賞してたら、子どもの名前をナオキにするしかなかったね」と。

円城 だって、直木賞をとって産まれたら100パー「ナオキ」ですよね? 連絡の電話が来た時に「産まれます、産まれます」みたいな実況になるわけだから。

辻村 子どもにしても「いま出たら出オチだな」みたいな感じはあったかもしれない(笑)。まあ、円城さんとそういうメールのやり取りをしたのが、たいへん思い出深いことでした。

――お2人が最初に出逢ったきっかけは何だったんですか?

円城 神林長平さんのアンソロジー企画の時ですよね。

辻村 そうです。私たちの作風が全然違うので、仲がいいっていうと意外に思われる方が多いと思うんですけど、神林長平先生が大好きという共通項がありまして。神林先生の作品のタイトルだけ継承して、若手作家が全然別の短編を書くっていうトリビュートアンソロジーの企画があったんですけど、その集まりで紹介されたのが最初。

円城 それが最初で、あとは、文学賞のパーティの時にすれ違うとか、サイン会の時に……

辻村 そう! 私としては、円城さんはSF界の貴公子だから、きっと私のことなんか友達とは思っていないだろうって思ってたんです。そしたら、私が大阪でサイン会をやった時に、円城さんが来てくれたんですよ。

円城 貴公子……。通りがかったら、たまたまサイン会をやってたんです。それで、列の後ろに並んで「こんにちは」って。

辻村 本当に通りすがりだとしても、来てくれるってことは私のことを友達だと思ってくれてるんだと思って(笑)、すごく感動したのを覚えています。

【次ページ】家族に怒られないように

別册文藝春秋 2014年7月号

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