- 2014.12.07
- 書評
変化こそが交渉の本質だ!
ハーバード人気「交渉術」講義を完全書籍化
文:土方 奈美 (翻訳家)
『交渉は創造である ハーバードビジネススクール特別講義』 (マイケル・ウィーラー 著/土方奈美 訳)
ジャンル :
#政治・経済・ビジネス
伝説的な投資銀行家、ブルース・ワッサースタインは人生のすべてを交渉ととらえていたという。派手な企業買収だけでなく、食事をする店を決める、会合に遅れそうなときに電話を入れるといった日常的な他者とのかかわりをすべて交渉事にして、それを楽しんだ。
そう考えると、私など交渉の世界の完全な負け組である。無茶な条件で仕事を引き受けるので常に首がまわらないし、思春期の子供とのまっとうな生活ルールをめぐる“交渉”はことごとく決裂している。ここぞというタイミングで絶妙なオファーを出し、望みどおりの成果を手に入れる才能は、生まれつきのものかと半ば諦めていたが、どうやらそうではないらしい。訓練によって上達が見込める能力だからこそ、アメリカの名門ビジネススクールは交渉学をカリキュラムに組み込んでいるのだ。
『交渉は創造である ハーバードビジネススクール特別講義』(原題The Art of Negotiation)の著者マイケル・ウィーラー教授は、ハーバードビジネススクールで必修となっている「交渉学」の責任者を長年務めてきた。その交渉術の最大の特徴は「交渉は動的プロセスである」という認識から出発していることだ。世界的ベストセラー『ハーバード流交渉術』を含む従来の交渉理論の限界は、双方の目的や利害、交渉が決裂した場合の次善策などはすべて「静的」、すなわち変わらないという前提に立っていることにある、とウィーラー教授は看破する。それでは現実の交渉に対応できない。
変化こそが交渉の本質だ。始まりから終わりまで、交渉人の目的や利益、置かれた状況、代替策、そしてパイの大きさまでもが変化しつづける。変化を所与のものと捉え、機敏に対応し、最高の成果をつかみとるのがウィーラー教授の交渉術だ。
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