貧富の差も大きく、混沌とした世界ながら先進的な文明を築いた古代ローマ。その魅力にどっぷり浸かり、長きにわたる海外生活の中でヴァーチャルに風呂欲を満たしたいとの思いから描いたのが、風呂技師のルシウスを主人公に古代ローマと現代日本を風呂文化でつなぐ『テルマエ・ロマエ』でした。
しかし、この作品を描くにあたって私がもう一つ強く願っていたのが、ルネサンスが古代ローマ文化への再評価から興ったように、日本にもルネサンスが花開いてほしいということでした。
17歳で絵を学びにイタリアに渡ったのち、異国の地でひとり出産した私は、世界各地を転々としてきました。古代ローマの話題で意気投合した夫(14歳年下)と結婚してからは、彼の研究にあわせて、中東、ポルトガル、アメリカと、住まいを変えてきました。
そうして時折、日本に帰ってきては、洗練されてクリーンで秩序だった日本の姿に驚かされます。より快適に進化を遂げ続けるお風呂やトイレはもちろん、あらゆるジャンルで高い技術をもつ先進国。でも一方で、この国には生きる喜びとか、活力とかが絶対的に足りてないと思ってしまうのです。
せっかく世界に誇る面白い感性をもっているのに、もったいない! なぜこんなにも日本にはルネサンスを阻むものが多いのか、と疑問に思えてくるところがあるのです。場の空気は重んじられるし、男女のあり方はどこか未熟だし、男性の考えるよき女性像はおかしな方向に進化中だし……。
とくに、女性観をめぐる日本の特殊な状況は不思議でなりません。ちょっと街に出て見てみると、それはお洋服の傾向からもわかります。どうやら、女性のみなさんはオシャレをするときに、女性らしさを誇張するようなヒラヒラの洋服を着ているらしい。男性と一緒にいるときのヒラヒラ傾向はとくに強くて、まるで男性をハントするための装いのように見えてくるわけです。中年男性たちは若いアイドルに夢中のご様子だし、奇跡的な若さをキープする40代、50代の女性たちは「美魔女」ともてはやされているらしい。
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