インタビュー・対談

子どもたちの議論の行く先は?

『十二人の死にたい子どもたち』 (冲方丁 著)

聞き手: 「オール讀物」編集部
子どもたちの議論の行く先は?

 デビュー20周年を迎えた冲方丁さんの最新作は、満を持しての現代もの、しかも密室ミステリーとなった。

「これまで、SFを書くことで自分の想像力を、時代ものを書くことで推論する力を鍛えてきました。SFや時代ものは、世界を描写して説明しないと物語の全体像が伝わりませんが、現代ものは会話や身振りだけで世界を描ける。だからこそ、今回は密室を描くことで現代社会が見えてくる作品にしようと、この形式に挑戦しました」

 インターネットを介し、集団自殺するために廃病院へ集った見ず知らずの子どもたち。全員で十二人のはずが、部屋には謎の“十三人目”の死体があった。予期せぬ事態を前にした彼らは、このまま自殺を実行すべきかどうか話し合うことになるが――。

「子どもたちは、ある子の死にたい理由が他の誰かの死にたい理由を否定する、対の関係になっています。好きなアイドルの死、病気、いじめに保険金など、本人にとっては切実な理由なのですが、一方で、他の誰かにとっては『え、そんな理由で?』となる。そういう状況で、初めて自分が相対化されていくんです。しかも、この対の関係が刻々と変化するように意識しました」

 死体の子は一体誰なのか。自分たちは謎を残したまま死んでいいのか……。話し合いを繰り返すうち、子どもたちの性格やそれぞれが抱える事情、死にたい理由が浮き彫りにされていく。「議論も大事ですが、感情や、個々人の事情といった、そこから抜け落ちてしまうものこそ重要だと思うんです。この集いは『自由意思による選択』をルールとしているので、相容れない主張も尊重されます。そんな中で、これまで異文化にいて接触することのなかった子どもたちが対話を重ねていくと、その考え方や意見の背景が見えてくる。そのうち子どもたちの心がどんどんむき出しになっていき、よりナイーヴになっていく反面、気持ちや価値観が前へ出てくるようになった。実は、そういう状態になった時点で、死から遠ざかっているんですよね。この変化は、書いていて気持ちよかったです」

 ミステリーでありつつ、偶然や、何も考えていない人物の行動によって、先が読めないものを目指したという。

「僕は本来プロットを仕上げてから書くのですが、今回は、子どもたちがプロットを無視してそれぞれ勝手に語りだすようになった(笑)。連載中は毎回『来号の自分、頑張れ!』と放り出すように書いていましたね。この作品で、自分を苦しめる楽しみを見出してしまいました」

冲方丁(うぶかたとう)

1977年岐阜県生まれ。『マルドゥック・スクランブル』で日本SF大賞、『天地明察』で吉川英治文学新人賞、本屋大賞、『光圀伝』で山田風太郎賞受賞。

十二人の死にたい子どもたち
冲方丁・著

定価:本体1,550円+税 発売日:2016年10月15日

詳しい内容はこちら

オール讀物 2016年11月号

定価:980円(税込) 発売日:2016年10月22日

詳しい内容はこちら