2010.08.20 インタビュー・対談

信州の自然が育む感動的なおいしさ

聞き手: 「本の話」編集部

『信州てくてくおいしいもの探訪』 (伊藤まさこ 著)

信州の自然が育む感動的なおいしさ

──二〇〇七年『東京てくてくすたこら散歩』、二〇〇八年『京都てくてくはんなり散歩』に続き、今回は“おいしいもの”を求めて伊藤さんが信州を駆け巡りました。「クレア・トラベラー」二〇〇九年三月号から「信州おいしいもの探訪」というタイトルで八回にわたり連載されたものが土台となっていますが、「信州」と「食」をテーマとした理由はなんでしょう。

伊藤  縁あって、二〇〇七年の春に長野県松本市に住み始めました。東京の友人たちに「すぐに飽きちゃうんじゃない」と心配されましたが、住めば住むほどこの土地が好きになって。とにかく空気と水がおいしくて自然が豊かだから、ここで育まれた食材もおいしい。野菜の味が“濃い”というのも初めて実感しました。 『京都てくてく~』が出来上がったときは松本で暮らして二年目で、数々出合ったおいしいものの秘密やもっとおいしいものを探りたい! という欲求があった頃。だから自然と「次は信州のおいしいものをめぐろう」という流れになったんです。

 

土から離れたばかりのアスパラガス

──信州のおいしいものと言えば、お焼きに野沢菜、蕎麦などが頭に浮かびますが……。

伊藤  よくそう言われますが、それだけじゃないんだ、ということを伝えようと思って(笑)。そもそも野菜や果物、肉や豆腐といった素材すべてがおいしいんですよ。なんといっても“鮮度”が違いますから。たとえば五月に開店すぐの市場に行くと、土から離れてほんの数時間しか経っていないアスパラガスがズラリと並んでいたり。新鮮な食材は蒸すだけ、茹でるだけ、焼くだけで感動的においしいのです。

  また、はじめに取材した「小布施(おぶせ)ワイナリー」ではワインの醸造にこだわるのはもちろん、ぶどうをビオロジック(無化学農薬栽培)の畑で育成するなど、素材や素材を育む土壌、さらに畑を取り巻く環境にまで気を配っていて驚きました。そういった“おいしさの理由”は奥深いものなので、単なる食べ物や場所の紹介ではなく、ひとつひとつ丁寧に掘り下げるスタイルにしました。

──雑誌連載はその「小布施ワイナリー」のある小布施から始まり、蓼科高原、大鹿村、木曾、諏訪、松本……と、土地ごとのおいしいものとその生産・製作過程を取材されていましたね。本書では春から始まり次の春を感じるところで終わる四季を軸とした構成になっています。

伊藤  信州の四季はそれぞれが個性豊かな表情にあふれ、物語性があります。冬がうんと長い分、春への喜びが格別に大きいので、四季を一巡したあとに次の春が来た! というところで終わろうと決めました。

信州てくてくおいしいもの探訪
伊藤 まさこ・著

定価:1365円(税込) 発売日:2010年09月15日

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