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『カッコーの巣の上で』のジャック・ニコルソンに衝撃を受けて――戌井昭人さんインタビュー(後編)

『カッコーの巣の上で』のジャック・ニコルソンに衝撃を受けて――戌井昭人さんインタビュー(後編)

「本の話」編集部

『俳優・亀岡拓次』『のろい男 俳優・亀岡拓次』 (戌井昭人 著)


ジャンル : #小説

「脇役俳優・亀岡拓次には、自分も5割くらい入っていますね――戌井昭人インタビュー(前編)」より続く

学生時代は芝居を学び、「文学座」の研究生だったこともある戌井さん。芝居の面白さに目覚め、杉村春子さんの誠実なやさしさに触れたことが、本作にもつながっていきました。安田顕主演、横浜聡子監督の映画『俳優 亀岡拓次』も、2016年1月30日から公開です!

『俳優・亀岡拓次』 (戌井昭人 著)

――戌井さんは定住派ですか、旅暮らし派ですか。

 定住できる場所があるから、うろうろできるんでしょうね。ポール・ボウルズみたいな作家にも憧れるんですけど、実際にパソコンを持って出かけても、何も書けません。

――『すっぽん心中』や『どろにやいと』も「いろんな場所をうろうろする話」でした。最初にどのくらい決めて書き始めるんですか。

 3分の1くらいかな。『すっぽん心中』は、霞ヶ浦からヤンキーみたいなのが売りにきたことがある、と浅草のすっぽん屋で聞いた話がもとになっています。霞ヶ浦という場所が絶妙だし、そこから浅草まで来たんだなあ、と。『どろにやいと』は、出羽三山に行ったこと。終着点はあんまり決めてません。筆が止まってしまうと、考えたり、うろうろしながら、続きがぽっと出るのを待つ。今も、止まっちゃってる小説、あるんですけどね。

――亀岡シリーズでは、筆が止まったり書くのに困ったりしたこと、ありましたか。

 あんまりなかったかな。旅をするたびに、亀岡だったらどうするかな、と意識しながら歩き回ってました。大森立嗣さんが映画(『まほろ駅前多田便利軒』で声の出演)に呼んでくれたときも撮影現場をうろうろして、「亀岡のネタ、作れたか?」って声かけられたり。経験したこと、あっと驚いたことを、それほどふくらませずに、どんどん小説に入れられて、書いていて楽しい作業でした。

――戌井さんは、パフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」を主宰されています。演出家や俳優でもあるのでは。

戌井昭人さん

 演出家は別にいるんですが、口出しをしています(笑)。意図を説明したり、こう動いてほしい、と伝えたり。もう、出るのは鉄割だけでいいや、と思ってます。俳優を突き詰める気持ち、文学座にいたころはありましたけど、鉄割を始めて、なくなっちゃいましたね。

――そのような立ち位置の戌井さんが、なぜ俳優を主人公にしたのでしょう。

 俯瞰できるようになったからでしょうか。俳優論のつもりでもないんですが。

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俳優・亀岡拓次
戌井昭人・著

定価:本体680円+税 発売日:2015年11月10日

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のろい男 俳優・亀岡拓次
戌井昭人・著

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