「カットノベル」をご存知だろうか? 映画の予告編のように、小説を1分間の映像にまとめたものだ。このカットノベルの製作・配信などを手がけるCUTNOVEL株式会社(2012年8月設立/本社仙台市)代表の奥山啓司さんは話す。
「私は以前に映像技師として映画館で働いていたのですが、映画の予告編が、それまで手にとらなかった小説を読むきかっけになる経験がありました。そこで映像化されていない作品でも、予告編を作れば読書への入り口になるはずだと考えたんです」
周囲にリサーチをかけて、映像は一番おさまりのいい1分間の長さにすることを決定。サイト上(www.cutnovel.com)での作品投稿を全国のクリエイターから受け付け、広く公開している。文芸評論家の池上冬樹氏を選考委員に迎え、2012年からは優秀作品を選ぶアワードも開催し、今年で4回目を迎えた。「国内のみならず日本の小説を海外に知ってもらい、また逆に海外の小説を日本で広める文化交流の場になれば」という思いから、初めてオーストラリア、インドなど5カ国からの応募も受け付けた。言語の壁を越えて映像で小説をシェアできるのもカットノベルの魅力と言えるだろう。
基本的には著作権が消滅した作品を扱ってきたが、この度、テストケースとして、クライムノベルの第一人者・馳星周さんの最新刊『復活祭』のカットノベル化が、著者の了解を得て遂に実現した。クオリティに定評のある新立翔さんが監督を務め、ITバブルを背景に騙しあう男女のコンゲームが魅力たっぷりの映像に仕上がっている。
今後は書店に設置したモニターで映像を流し、ダイレクトに書籍の販売増加を目指した試みも拡大予定だ。『復活祭』のカットノベルも、12月末から三省堂書店神保町本店(東京都千代田区)、八重洲ブックセンター本店(同中央区)ほかで展開されていく。