- 2019.07.02
- 書評
アラフォーのねじれたヒロイン像が新鮮! 重めのドロドロ系小説の入門編
文:東村アキコ (漫画家)
『ペット・ショップ・ストーリー』(林真理子 著)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
ラストの『秘密』は容姿も性格も対照的な妹に対して、姉が抱くささやかな悪意や嫉妬が描かれている。地元のリサイクルショップでたくましく働く妹を応援しながらも、買い付けのたびに東京で不倫を重ねる妹を心のどこかでおもしろがっている。ろくなことにならないのはわかっているのに、不倫をたきつけているようで、けっこう性格が悪いと思う。「陽子は私なのだから」という最後のつぶやきは意味深だ。このお姉さんのように一見まともそうに見えて、心の中で「ウッシシ」みたいなイヤなことを考えている人はけっこう多いのだろうか。
十一篇の短篇を読み通して、あらためて思った。人生はきれいごとじゃない。それこそマルチーズの耳ダレみたいな汚いシミがいっぱいついている。そして、ふだん忘れていても、ふとした瞬間に気づかされるのだ。「あれ、こんなところにシミが……」と。林さんの小説にはそういう力がある。一篇は短くても、登場人物ひとりひとりの人生がギュッと詰まっている。前向きなヒロインが頑張る今どきのドラマを見慣れた人には、アラフォーのねじれたヒロイン像はかえって新鮮に映るだろう。重めのドロドロ系小説の入門編として、自信を持ってお薦めしたい短篇集である。
インタビュー・文 門田恭子
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