作品
松山出身の歌人正岡子規と軍人の秋山好古・真之兄弟の三人を軸に、維新から日露戦争の勝利に至る明治日本を描く大河小説。全八冊
戦争が勃発した……。世界を吹き荒れる帝国主義の嵐は、維新からわずか二十数年の小国を根底からゆさぶり、日本は朝鮮をめぐって大国・清と交戦状態に突入する。陸軍少佐・秋山好古は騎兵を率い、海軍少尉・真之も洋上に出撃した。一方、正岡子規は胸を病みながらも近代短歌・俳句を確立しようと、旧弊な勢力との対決を決意する。
日清戦争から十年——じりじりと南下する巨大な軍事国家ロシアの脅威に、日本は恐れおののいた。「戦争はありえない。なぜならば私が欲しないから」とロシア皇帝ニコライ二世はいった。しかし、両国の激突はもはや避けえない。病の床で数々の偉業をなしとげた正岡子規は、戦争の足音を聞きながら。燃えつきるようにして逝った。
明治三十七年二月、日露は戦端を開いた。豊富な兵力を持つ大国に挑んだ戦費もろくに調達できぬ小国……。秋山好古陸軍少将の属する第二軍は遼東半島に上陸した直後から、苦戦の連続であった。また、連合艦隊の参謀・秋山真之少佐も、堅い砲台群でよろわれた旅順港に潜む敵艦隊に苦慮を重ねる。緒戦から予断を許さない状況が現出した。
青春小説の名作が読みやすくなって再登場。前半は、奥手だった幼年期から、剣術修行、脱藩、勝海舟との出会いと海軍塾設立までを描く
日本海の霧の中から、ロシアのバルチック大艦隊がついに姿を現わした。国運を賭けたすさまじい海戦が火ぶたを切った…。明治の群像を描く感動の大河小説完結篇
(七を参照)
(一を参照)
松山出身の歌人正岡子規と軍人の秋山好古・真之兄弟の三人を中心に、維新を経て懸命に近代国家を目指し、日露戦争の勝利に至る勃興期の明治を描く大河小説。(島田謹二)
坂の上の雲(三)
坂の上の雲(二)
坂の上の雲(一)
日露戦争を、政略・戦略・戦術ぐるみの一切合財の規模において、日本を勝利に締めくくらしめたのは、日本海海戦における日本側の完全以上の勝利によるものであった。この一戦で、両国の複雑な戦争計算がはじめてただ一つの共通の答えを出した。ロシアが完敗した
明治期には子規のような人生の達人といった風韻のもちぬしはありふれて存在していたようにおもわれる。江戸時代の精神遺産が子規の時代ぐらいまで継続していたといえるかもしれず、………
ロシアにとっては侵略政策の延長線上におこった事変である面が濃いが、日本にとっては存亡を賭けた国民戦争たらざるをえなかった。日本は、別な文明体系へ転換してから三十余年後にその能力を世界史の上でテストせざるをえなくなった
明治には非能力主義的な藩閥というものはあったが、しかし藩閥は能力主義的判定のもとにうまく人を使った。明治日本というこの小国家は、能力主義でなければ衰滅するという危機感でささえられていた
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